受動態の分詞構文はhaving beenも省略可能

分詞構文には単純形と完了形があり、後者の場合、文の述語動詞の表す時よりも前の時を分詞構文は表します。

単純形の例:Drinking coffee, Mr. Kato watched television. (コーヒーを飲みながら、加藤氏はテレビをみた。)

完了形の例:Having drunk coffee, Mr. Kato watched television. (コーヒーを飲んでしまってから、加藤氏はテレビをみた。)

より正確に書くと、単純形でも時間の前後関係を表すことはできます

Opening the bottle, he poured the wine into my glass. (びんのせんを抜くと、彼は私のグラスにワインをついだ。『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.521)

上の例文で、「びんのせんを抜く」が時間的に前、「ワインをついだ」が時間的に後です。信頼できる文法書『ロイヤル英文法』は上の例文を挙げつつ、特に強調したり、意味が曖昧になったりしないかぎり、ある動作の後にほかの動作が続くとき、はじめの動作を分詞にして前に出す際、完了形にする必要はない旨を述べています(同上)。

言い換えると、完了形の分詞構文は、分詞が表す時が、文の述語動詞が表す時より前であることをよりはっきり示す、といえます。

また、分詞構文には受け身の動作や状態を表す受動態の分詞構文があります。“being+過去分詞”が用いられ、beingは、文頭に来る場合、省略することができます

(Being) Written in plain English, this book is suitable for beginners. (分かりやすい英語で書かれているので、この本は初心者に適しています。)

本エントリーの本題はここからです。文の述語動詞の表す時よりも前の時を表し、かつ、受け身の動作や状態を表現する場合、分詞構文は、完了形の分詞構文と受動態の分詞構文の複合型になります。

Having been built in the late 1800’s, many of the Western style buildings in this area remain standing without serious damage. (建てられたのは1800年代末ですが、この地域の洋館の多くは重大な損傷なく依然立っています。)

having beenは省略することができます。つまり上の例文は次のものと同義です。

Built in the late 1800’s, many of the Western style buildings in this area remain standing without serious damage.

この、having beenが省略可能という点を知らないと、「分詞構文の箇所(1800年代後半のこと)は、文の述語動詞(現在時制)より前の時を表すべきなのに、完了形の形になっていない。だから、この文の書き方は正しくない」のように上の例文を捉えてしまいます。例えば、空所に入る語として適切なのはどちらでしょうかと、次の問題があったとします。

—— in the late 1800’s, many of the Western style buildings in this area remain standing without serious damage.

(A) Built (B) Having built

正解は上の例文のとおり(A) Builtになるわけですが、having beenが省略可能という点を押さえていないと、「分詞構文の箇所(1800年代後半のこと)は、文の述語動詞(現在時制)より前の時を表すはず。よって、正解は完了形の分詞構文である(B) Having built」のように考え、間違えてしまいます。「この地域の洋館の多く」は「建てられた」ものなので、完了形の分詞構文であるだけでなく、受動態の分詞構文である必要もあります。よって(B) Having builtは不適で、Having been builtと書かなければなりません。そして、Having beenを省略した(A) Builtが正解になります。

本エントリーは、『TOEICテスト新公式問題集』(国際ビジネスコミュニケーション協会,2005年)の「TEST1 PART5」134(p.47)にヒントを得て、解説しようと考えた文法事項です。TOEICで狙われそうな事項を本サイトは取り上げているわけですが、正確な理解が大切だと感じる一例です。

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投稿者: robin

robinと申します。学生時代に1回だけ受けたTOEICで945点。「初受験でたまたま高得点取れたから、「勝ち逃げ」でいいか…」みたいに思っていましたが、考えるところがあり、最近また勉強を始めました。 <TOEIC戦績> TOEIC® Listening & Reading公開テスト 自己ベスト980点 TOEIC® Listening & Reading Institutional Program (IP) online Test 自己ベスト980点 リスニング495点満点通算12回(公開テスト8回、IPテスト1回、IPテスト(オンライン)3回。通算12回中、11回は連続で495点満点) TOEIC® Speaking & Writing Tests Speaking 170 Writing 180(受験回数1回。今後もっと受けたいです) IIBC AWARD OF EXCELLENCE 受賞 <その他> 英検1級 日本翻訳連盟 3級翻訳士(科目:和文英訳 分野:情報処理) 大学で英語科目を担当(18年目) TOEIC LR 990点を目標にがんばります。 このウェブサイトでは、自分自身のメモも兼ねて、TOEICのスコアアップに役立つ情報や英語全般について書いていきます。 将来はTOEIC以外の英語に関する話題についても書きたいです。そうなったら、サイトのタイトルも変えるかも。

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