than any otherの次は必ず単数形か?複数形も許容されるか?

当サイトは通常、白黒をはっきりさせるエントリー(「この点はこうなので、間違えないよう注意しましょう」のようなエントリー)を投稿しています。ですが今回は、「この点は文献ごとに異なります」という投稿をあえてしてみます。すなわち「than any otherの次は必ず単数形か?複数形も許容されるか?」です。

そもそも、形容詞としてのother(ほかの、別の)は名詞の複数形を直接修飾するか、または、no、any、some、one、theなどの冠詞もしくは冠詞相当語を伴って名詞の単数形や複数形を修飾します(※)。例えば次のとおりです(otherには形容詞用法のほかに代名詞用法などがありますが、本エントリーでは形容詞用法に絞ります)。

other people(ほかの人たち)
three other girls(ほかの3人の少女)
some other time(いつかまた)

※冠詞もしくは冠詞相当語を伴わず、 単数形を直接修飾するときには another を用います。anotherの原義は「もう一つの(an)別の(other)」です。

本エントリーでは、上記のとおり、than any otherについて考えてみたいと思います。

『新英和中辞典』(第7版,研究社,2003年)や『ジーニアス英和辞典』(第5版,大修館書店,2014年)のotherの項には、“Any other question(s)?”、“Do you have any other question(s)?”という用例が載っています。また、Googleを“any other question”で検索しても、“any other questions”で検索しても、膨大な件数がヒットします(半角のクォーテーションマーク(二重引用符) 「 “” 」でキーワードを囲んでGoogle検索をすると、入力したキーワードの順番で完全一致検索ができます)。any otherの次には単数形が来ることも、複数形が来ることも、どちらもあるようです。

ところが、単にany otherでなくthan any otherとなると、文献によって論調が異なります。『総解英文法』(美誠社,1970年,p.313)は、than any otherの次は単数名詞だと明記しています。

一方、上記『新英和中辞典』の、“Mary is taller than any other girl(s) [the other girls] in the class.”という用例の箇所には、「any other に続く名詞は単数を原則とする」とあります(引用箇所の太字は当サイト管理人による。以下同様)。

上記『ジーニアス英和辞典』でも、“I like roses better than any other flower.”という文を説明する箇所で、次のとおり述べています。

… than any of the other flowers. との混同で× … than any other flowers. ともいうことがあるが, 誤りとされる. than any other の後では単数名詞を使うのがよい

ちなみに、ビートルズの歌にも次のような一節があります。「ほかの男」は複数いそうなものですが、than any otherの次は単数形guyを用いていますね。

If I were you I’d realize that I love you more than any other guy(“No Reply”)
(当サイト管理人の訳:もし僕が君だったら、ほかのどの男よりも君を愛していると気づくのに。→僕より君を愛している奴なんかいないよ。)

以上の文献を読むかぎり、基本的には、than any other に続く名詞は単数形が正しいといえそうです。ただし『新英和中辞典』や『ジーニアス英和辞典』は、「を原則とする」、「ともいうことがある」と述べており、複数形を絶対に否定しているとまではいかないように見えます。

論調がさらに異なる文献もあります。『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.368)は、“Exxon-Mobil is bigger than any other company in the world.”という例文の後で、次のとおり述べています。

くだけた言い方ではthan any other companiesのようにany otherの後に複数形を用いることもある。

『現代英文法講義』(開拓社,2005年,p.577)に至っては、次のとおり、than any other+複数形の用法を認めています。

主語が複数の場合は,「any other+複数名詞」になる.
American farmers produce more individually than any other farmers in the world.
(アメリカの農場主は、世界のほかのどの農場主よりも個人個人の生産性が高い)

実際、“than any other”でGoogleを検索すると、英語で書かれたページで、than any otherの次に複数形を用いているページも見つかります。それが英語として正しいかどうかという点については、以上のとおり、文献ごとに見解が異なります。

本エントリーは、『公式TOEIC Listening & Reading 問題集6』(国際ビジネスコミュニケーション協会, 2020年)「TEST1 PART5」の120(p. 43)にヒントを得て、解説しようと考えた事項です。than any otherの次に来るのは単数形か?複数形もOKか?がそこで直接問われているわけではなく、問題を解くのには支障がない構成になっていますが、興味深いので取り上げる次第です。

比較級に定冠詞theが付く場合

※2023.09.06追記:旧エントリー「最上級の直後のever」の内容は、このエントリーおよび以下のエントリーに、大きく加筆しつつ、整理・統合・分割しました。最上級の直後のeverについては、このエントリーの最後に解説しています。

名詞の繰り返しを避けるthat, those(that of, those ofなど)

絶対比較級って知ってますか?

er, estの比較変化をする語にmoreを使う場合:同一の人や事物の比較

最上級に定冠詞theが付かない場合

2つの人や事物を比べて、一方がもう一方よりも程度が高い/低いことを表す比較級は、“A is … er [more …] than B.”(程度が低いことを示す場合は“A is less 原級 than B.”)が基本です。

その比較級に定冠詞theが付く場合があります。本エントリーでは、この点について整理します。

1.「2者のうち一方のほうがより…」

「2者のうち一方のほうがより…」の意味の場合、以下の例のように、the+比較級の形を取ります。

Who is the stronger of the two? (2人のうち強いのはどちらだ?)

Which is the less famous of the two? (2つのうち人気がないのはどちらだ?)

日常的な文では最上級が使われることもよくあるとされます(『英文法解説』改訂3版,金子書房,1991年,p.174.同旨、『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.361)。

Who is the strongest of the two?

なお、「2者のうち一方」でなく、会話で、“This way, it’s more easier to see.” (こうすればもっと見やすい)のように、erにさらにmoreを付ける例を見かけることもありますが、非標準で無教養と非難されることが多いので避けるべきだと『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年、p.350)が指摘しています。

2.the+比較級、the+比較級

「the+比較級、the+比較級」で、以下のように、「…すればするほど~」という意味を表します。

“I should prepare for the entrance examination.” “The sooner, the better.” (「入試の勉強をしなきゃ。」「早ければ早いほどいいよ。」)

The more you have, the more you want. (多くのものを持てば持つほど、ますます欲しくなる。)

『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.361)などは、「the+比較級」単体でも「それだけ一層…」の意味になる点を指摘しています。

I was the more upset because he blamed men for the accident. (彼がその事故を私のせいにしたので、私は余計ろうばいした。)

なお、“The more you study, the more easy it is to pass the examination.”(勉強すればするほど,試験に受かりやすくなるよ)のように、通常er形になる語(この場合はeasy)も、moreを付けた形になる場合があります(不規則変化をする語を除く)

3.the+比較級+because[for]…

「the+比較級+because[for]…」で、以下のように、「…なので一層~」という意味になります。

I love him all the more for his weakness. (彼に弱さがあるから、いっそう彼が大好きです。この例のように、強調の副詞allが付くことが多いです)

※上の例文を書くために、いろいろ辞典を引いたわけですが、“We all have our own little weaknesses.” (我々にはだれにでもちょっとした欠点があるものだ。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)という用例に出会いました。littleが複数形を修飾しているわけです。こういう使い方もあるのかと思い,“little weaknesses”でGoogle検索すると、まあまあ多数のヒットがあります。検索をした時点では、YouTube動画なども含め、楽曲のタイトルとおぼしきものも含まれていました。

次はlittleを辞典で引いてみると、“little chairs”(小さな椅子)や“our little ones”(うちの子どもたち)などの用例がふつうにあります。これは、当サイト管理人にとっては盲点でした。単に、当サイト管理人の英語力がまだまだなだけかもしれませんが、勉強することは無数にあるなあと感じます。

なお、none the worse forで「…にもかかわらず変わらない」です。直訳は「…だからといって、いっそう悪くなった、ということはない」ですが、慣用的に先のように訳します。

He was none the worse for drinking much alcohol. (彼は大量の酒を飲んだが、なんともなかった。)

ちなみに:muchとtheの位置関係など

以下、連想される話題ということで、紹介します。比較の単元で定冠詞theといえば、最上級を連想する人がやはり多いと思います(ただし、最上級には定冠詞がつくと頭から考えるべきではなく、最上級と定冠詞theの有無にはさまざまなパターンがある点は、最上級に定冠詞theが付かない場合を参照)。その最上級はmuch, by far, far, far and away, very, everなどで次のように強調することができます(※)。それぞれ、the very bestやmuch the bestなどの語順になることに注意してください。

This is the very best of his work. (これは彼の作品のうちまさに最高のものだ。)

He is much the best player on the team. (彼はチームで最高のプレーヤーだ。前置詞onが使われ、on the teamという表現であることにも注意。onでなくinも用いられる(※※)

He is by far the best player on the team. (同上。)

He is the best player by far on the team. (同上。こういう語順がある点に注意)

He is the greatest poet ever. (彼はこれまでで最も偉大な詩人だ。(※※※))

That book was his best ever. (=That was the best book that he had ever written. その本は彼の生涯最高の傑作だった。『ジーニアス英和辞典』大修館書店,第5版,2014年.強調、当サイト管理人(※※※))

※何冊もの文法書を参照してこのエントリーを書いているわけですが、『英文法解説』(改訂3版,金子書房,1991年,p.180)のみ、最上級の意味を強める語句としてはby farが最もよく使われると指摘しています。

※※2023.08.26追記:辞典やネットを調べましたが、“He is a member of the team.”(彼はチームのメンバーです)のように、前置詞ofを用いた、a member of the teamいう表現も一般的に広く使われるようです。ただし、「最上級の後で、単数形とともに、場所や集団を指して」という条件下ではofは避けられるという意見を目にしました。
参考:https://englishwordsvocabulary.quora.com/Which-sentence-is-correct-He-is-the-best-player-in-the-team-or-He-the-best-player-of-the-team

※※※上記のように、everには、最上級の後について、それを強める用法があります。「これまでで、今までで」のような意味を成します。比較級の前後でも用いられる場合があります。その場合は「さらに一層、ますます」の意味になります。

It’s raining harder than ever. (雨がさらに一層激しく降っている。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

many more+複数名詞とmuch more+不可算名詞

絶対比較級って知ってますか?でも触れたように、通常、比較級の強調にはmuchなどがよく使われます。大学受験などでも頻出の事項で、ひっかけの選択肢がmanyやveryだったりします。下の例文で、muchは比較級more beautifulを強調しています。

She is much more beautiful than her mother. (彼女は母親よりずっと美しい。)

そのため、many more+複数名詞という形もあると聞くと、戸惑うというか、意表を突かれる方も多いと思います。例えば以下の2つ目や3つ目の例文のように、「ずっと多くの」の意味を表します。

There were five more applicants than the job openings. (空きポストより5人多くの応募者がいた。)

There were many more applicants than we had expected. (予想よりずっと多くの応募者がいた。)

I rate this restaurant five stars (many more in fact)! (このレストランに五つ星を付けます(実際は五つ星じゃ全然足りないですけど)!)

※「五つ星」は、上の“five stars”のほかに、“five-star”や“five-star rating”という言い方もあります。以下のように、同じパターンでいろいろな表現がありえるわけです。“a five-star hotel”や“a five-year-old girl”などは、「不定冠詞(a/an)+数詞+ハイフン(“-”)+単数名詞」という形です。

当サイト管理人の個人的な思い出ですが、大学院生時代、英語非常勤講師募集の求人を某大手予備校が出していました。1次試験が筆記、2次試験が面接でした。1次試験の問題にこの事項を問うものが出ていました。この事項に関しては、英語を教える側の先生も、ちゃんと勉強していないと、“five years old”と“a five-year-old girl”など、以下のような区別ができなくなってしまいます。予備校の採用試験ではそこを突いてきたのですね。

This hotel is five stars. (このレストランは五つ星です。)

This is a five-star hotel. (これは五つ星のレストランです。)

She is five years old. (彼女は5歳です。)

She is a five-year-old girl. (彼女は5歳の少女です。)

話が広がりました。many more+複数名詞に話題を戻します。不可算名詞には量を表すmuchが付きます。この形なら、「名詞を修飾する形容詞の比較級の強調」(すなわち「much+形容詞の比較級+名詞」。例えば“This is a much more beautiful flower than that.”など)と似てきます。が,今話題にしているのは「much more+不可算名詞」であり、やはり、ちょっと特殊な形です。

これらのmanyやmuchはfarやa lot,wayなどと置き換え可能です。日本でふつうに学校の勉強だけしていると(学校で習う英語も、ちゃんと勉強すれば、かなりのところまで身に付きますが)、最後のwayなんかは珍しいかもしれませんね。

I need much more money. (私はずっと多くのお金が必要だ。)

I need a lot more money. (同上)

I need a way more money. (同上)

絶対比較級って知ってますか?

絶対比較級とは

比較の対象をはっきり示さないで、あるものを漠然と2つに分けて、そのうちの程度の高い方を表す形容詞の比較級の用法絶対比較級といいます(絶対最上級については最上級に定冠詞theが付かない場合を参照してください)。

もう少し詳しく理解するために、専門的な文法書を見ておきたいと思います。

『英文法総覧』(改訂版,開拓社,1996年,p.351.強調、当サイト管理人)は、絶対比較級を、「比較の意味をもたず、問題となっている対象が、ある性質を「どちらかといえば比較的多く」持っていることを表す、一種の「ぼかし表現」である」としています。同書はdresses for larger women(大きめの御婦人用洋服)を例に出し、それが「dresses for large womenよりも、ずっと柔らかな表現」だと述べています。

『現代英文法講義』(開拓社,2005年,p.574.下線、当サイト管理人)は次のとおり指摘しています。

年配の人は、old manと呼ばれるのはいやがるが、older manと呼ばれるのには異議を唱えないかもしれない。olderは、oldほど年とっていないように思われるからである。(中略)原級を用いた表現より丁寧な印象を与える。商業関係者が絶対比較級を多用するのは、この効果のためである

上の引用箇所で下線を引いたうち、「olderは、oldほど年とっていないように思われる」は、英語を母語としない日本人にはちょっと分かりづらいようにも思います。この点について、『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.364)は、the younger generationという表現は、1つの世代(generation)を大きく2つに分け、若い方をyoungerで示すものであり(年配の方はolder)、その大きな分け方であるthe younger generationに含まれる一部がthe young generationである旨を解説しています。

この解説に従って考えると、the young generationの方がthe younger generationより若いことになります。同様に、the old generationの方がthe older generationより年を取っていることになり、上記『英文法総覧』や『現代英文法講義』の説明が一層理解できます。デパートの売り場の看板やポップは、絶対比較級になりそうです。

絶対比較級の特徴

絶対比較級には次の特徴があります。

1.than…の形を取らない。

People worry about the rising cost of higher education. (人々は高等教育の費用の値上がりを懸念している。)

2.名詞の前に置かれることが多い。

The education he received is higher.

よりも

He received a higher education. (彼は高等教育を受けた。)

の方が自然。『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.364)は“This is a higher class hotel.”(ここは高級ホテルです)は正しく、“The class of this hotel is higher.”は誤りだと言い切っています。

3.muchなどで強調することができない。

通常、例えば以下のように、比較級の前にはmuchなどを付けて強調することができますが、絶対比較級の場合はそれが不可とされています。

Mike is much stronger than Tom. (マイクはトムよりずっと強い。)

参考:通常、比較級の強調や修飾に使われる語句の例

much, very much(←比較級の強調はveryではなくmuchですと最初は習うとと思いますが、very単体ではなく、このようにvery muchという形もあることに注意), far, by far, far and away, a lot, lots, even, still, a good deal, a great deal, a bit, a little bit, considerably, rather, somewhat, any, no, way, many more+可算名詞, much more+不可算名詞, ever

比較的珍しいものも上記には含まれています。いくつか例を挙げておきます。

Mike is very much stronger than Tom. (マイクはトムよりずっと強い。上記のとおり、very単体ではなく、このようにvery muchという形もあることに注意)

Mike is somewhat stronger than Tom. (マイクはトムよりいくらか強い。)

Mike is a lot stronger than Tom. (マイクはトムよりずっと強い。)

Mike is stronger than Tom, but George is even [still] stronger than Mike. (マイクはトムより強いが、ジョージはマイクよりさらに強い。)

I can’t wait any longer. (私はもう待てない。)

I can walk no further [farther]. (もうこれ以上歩けない。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

4.対になった言い方が多い(本エントリー「絶対比較級とは」参照)。

the younger generation — the older generation (若い世代 — 年を取った世代)

the lower animals — the higher animals (下等動物 — 高等動物)

the upper reaches of a river — the lower reaches of a river (川の上流 — 川の下流)

5.「比較的」、「かなり」と訳す場合も多い。

the brighter side of life (人生の比較的明るい側面←当サイト管理人注:前後の文脈にもよりますが、「比較的」と訳すことができます)

最上級に定冠詞theが付かない場合

英語の最上級について最初に習うとき、the+ estまたはthe+mostという形(最上級には定冠詞theがつく)をとにかく覚える場合が多いと思います。

February is the shortest of all the months. (2月は全ての月の中で一番短い。)

ところが以下のとおり、最上級に定冠詞theを付けない場合もけっこうあります。このエントリーではそれについて整理してみましょう。

1.冠詞相当語

形容詞の最上級が名詞を修飾する場合(すなわち限定用法の場合)にはtheが付きます。上に述べた、最上級を最初に習うときに典型的であろう例です。ただし例外があり、theの代わりに名詞・代名詞の所有格や、thisやthatなどが付く場合があります(冠詞相当語)。文法的には、次の2つの文はどちらも正しいです。

This is the best work of his career. (彼のキャリアの中でこれは最高傑作だ。)

This is his best work. (これが彼の最高傑作だ。)

2.同一の人や事物についての比較

ほかとの比較ではなく、同一の人や事物についての比較を表す形容詞が補語として用いられている場合(すなわち叙述用法の場合)、ふつう(※)、theを付けません(ほかのエントリーでも書きましたが、「同一の人や事物についての比較」って分かりづらいですが、以下を読んでいただければ「こういう話か」とピンと来てもらえると思います)。

This lake is deepest here. (この湖はここが一番深い。)

次のような場合(同一の湖についてではなく、異なる別の湖と比較している場合)にはtheが付きます。上の例文とペアで覚えましょう。

This lake is the deepest in this country. (この湖がこの国で一番深い。)

※上で「ふつう、theを付けません」と書きました。信頼できる文法書『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.365)は、アメリカ英語ではtheを付けることもあると述べています。

3.叙述用法の形容詞

「2.」のほかにも、叙述用法の形容詞の場合(すなわち形容詞が補語として用いられる場合)、theを付けないことがあります。

His failure is plainest. (彼の失敗は極めて明白だ。『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.366. 同書は、この場合の最上級は強意用法であるとしています。)

※当ブログ管理人補足:それでは強意用法とは何かが気になる人もいると思います。あまり聞き慣れない言葉だからです。「意味を強める文章表現の手法」と理解しておけばよいです。

4.副詞の最上級

副詞の最上級にはtheを付けないこともあります(付けることもあります。そのため、以下の例文でtheはかっこ書きになっています。付けても付けなくてもどちらも正しいです)。

Who ran (the) fastest? (誰が一番速く走りましたか?)

5.絶対最上級

「a most+原級+単数名詞」や「most+原級+複数名詞」、または「most+形容詞/副詞」で、比較の対象をはっきり表さず、話し手の個人的感情や意見を示すものとして、程度が極めて高いことを表す用法があり、絶対最上級と呼びます。「超すごい圧倒的な最上級」のことか??と思えるかもしれませんが、「相対的でない最上級」のような意味でしょうね。

この用法では、通常はestの規則変化をする形容詞もmostを用いて最上級を作ります。上のとおり、その際theを付けません。

気づいた人は鋭い!ですが、絶対最上級はveryと同じような意味です。veryよりも固い言い方であるとされます(『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.367)。

This is a most delicious cake. (これはとてもおいしいケーキだ。)

ただし、ややこしいことに、絶対比較級に不可算名詞を用いる場合はtheが付くのがふつう(付けない場合もある)とされます。また、the … estの形で絶対最上級を表す場合もあります。信頼のおける文法書『ロイヤル英文法』と『新マスター英文法』がそれぞれ次の例文を挙げています。

I owe him (the) deepest gratitude. (彼にはとても感謝しています。改訂新版,旺文社,2000年,p.367)

He showed the greatest patience. (彼は非常な忍耐を示した。『新マスター英文法』聖文新社,2008年,p.327)

6.「たいていの、大部分の」のmost

mostが「大抵の、大部分の」という意味で用いられる場合、その前にtheは付けません。

In most cases, apples are popular. (大抵の場合、リンゴは好まれる。)

参考:most、most of、almostの違いを即答できるか?

7.成句(at last, at long lastなど)

at lastat long last(ついに、とうとう、やっと)などの成句ではtheが付いていません。ただし、上の成句にtheを付したat the lastat the long lastという表現がないわけではありません。“at the last”や“at the long last”でGoogle検索すると多数のヒットがあります。特にat the lastには

at the last minute, at the last moment(直前になって,土壇場で)

という、at lastとは意味の異なる用法があります。

まとめ

マニアックな英語サイト・英語ブログの多くが「短絡的に、最上級にはtheが付くと覚えるのは間違い!」だと指摘しています。また、『英文法総覧』(改訂版,開拓社,1996年,p.355)も「「最上級には定冠詞がつく」というように頭から考えるべきではな」いとしています(強調、当サイト管理人)。実際、上のように整理すると、そのとおりで、最上級と定冠詞theの有無にはさまざまなパターンがあることが分かりますね。

er, estの比較変化をする語にmoreを使う場合:同一の人や事物の比較

英語の比較級には、異なる人や事物同士を比較するのでなく、同一の人や事物を比較する構文があります(「同一の人や事物を比較」って分かりづらいですが、以下を読んでいただければ「こういう話か」とピンと来てもらえると思います)。

This dress is more comfortable than elegant. (このドレスはエレガントというよりは着心地が良い。)

上の文は、異なる2つのドレスを比べているのではなく、同一のドレスについて、エレガントというよりは着心地が良いと述べています(すなわち同一の事物の異なる特性を比較しています)。

This dress is comfortable rather than elegant.

と同義ですね。

この構文にはer, estの比較変化をする語も原則としてmoreを用いるという特色があります。

This dress is more pretty than comfortable. (「このドレスは着心地が良いというよりは可愛い。」→prettyは通常、prettier, prettiestという変化をするが、この例文の場合はmore prettyの形を取る。)

ただし、①than以下の主語+beを省略しない場合、②不規則変化の語の場合は例外です。

①の例:He is wiser than he is clever. (彼は頭がいいというよりも賢い。)

※昔のことであり、どの書籍に書いてあったか失念してしまったのですが(確か、大学受験の参考書か、または、初めて海外に行く前に読んだ英会話本だったように思います)、cleverは優等生的に「頭が良い」、wiseはおばあちゃんの知恵袋的に「賢い」というニュアンスの違いがある、と本で読んだことがあります。

そのことを思い出して、『ジーニアス英和辞典』(第5版,大修館書店,2014年)を引いてみると、以下のとおり解説しています。

wiseは知識や経験が豊かで「賢明である」の意. cleverは《主に英》, smartは《主に米》で, それぞれ頭の回転が速く「利口である」の意だが, 時にずる賢いことも表す.

話が広がりました。戻します。信頼のできる文法書『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.362)は、

moreの形の方がよく用いられ,rather thanの方がさらに自然。

と述べています。上の文(“He is wiser than he is clever. ”)よりも

He is wise rather than clever.

He is more wise than clever.

の方が自然、ということですね。ビジネスや受験、資格試験などで英文を書く際,覚えておけば役に立ちそうです。

②の例:This video is worse than useless. (この動画は役に立たないどころか有害である。この動画は有害無益(※)である。)

※またもや話は広がってしまいますが,「有害無益」という表現にdo more harm than goodがあります。覚えておきましょう。

『ロイヤル英文法』はまた、③「原則として比較変化をしない語や名詞などもこの構文では用いられる」として、以下の2つの例文を挙げています(p.363)。以下の2つの例文は、(ほぼ)同一のものをほかの参考書や問題集でも見かけます。何回も暗唱・暗記して頭に叩き込んでおくと良さそうです。

He was more dead than alive. (彼はへとへとに疲れていた。)

※当サイト管理人注:ほかの文法書(例えば『総解英文法』(美誠社,1970年,p.310)は、類似の例文を「彼は半死半生だった」と訳しています。和英辞典を引くと、more dead than aliveを「半死半生の」としているものが複数あります。「へとへと」と「半死半生」ではニュアンスに差があります。よってこの表現は、ともかく頭に叩き込んでおき、英語を読むなどしていて実際に出くわした際にどう訳すか、どう理解するかは前後の文脈も考慮せねばならない、といったところでしょう。

He is more a journalist than a scholar. (彼は学者というよりはジャーナリストだ。)