「…に~させる」という使役などの意味を表す動詞にはlet, make, have, get, helpなどがあります。本エントリーではそれらについて解説します。
はじめに:各語のニュアンスと目の付けどころ
定番の文法書『ロイヤル英文法』(旺文社,改訂新版,2000年,p. 389)は、let, make, haveのニュアンスの違いを次のとおり説明しています。
letは「自由に~させておく」という容認を、makeは「無理にでも~させる」という強制を表す。また、haveは「~してもらうようにもっていく」という手はずを表す。
makeが「(無理にでも)…させる」というニュアンスであるのは、大学受験の英語を勉強していても出てきます(受験英語を割とやり込んだ場合かもしれません)。
letも事情は同様なのですが、letの場合はさらに、ビートルズの歌に“Let it be”があります。「あるがままに」と訳されたりします。直訳的に和訳すると「それ(特に指すものはないか、あるいは、事情・状況を漠然と指すitかと思われます)をあるがままにさせておきなさい」とでもなりましょうか。このことからも、上の説明は納得です。
“I let him go.”は「(彼が望んだので)私は彼を行かせた。」、“I made him go.”は「(彼は行きたがらなかったが)私は彼を行かせた。」のようなニュアンスになります。
haveも、日本語で「持っている」なので、直感的ではありますが「手はず」が腑に落ちるように思えます。
以下、let(make, have, get, help)+目的語の次が原形不定詞/過去分詞/現在分詞/to 不定詞のどれか、および、それぞれの意味を押さえていきましょう。
let
let+目的語+原形不定詞(※)で「…させる」の意味を表します。
※原形不定詞とは、動詞の原形をそのまま用いるものです。toのない不定詞、または単に原形と呼ばれることもあります
例1:He won’t let anyone enter the room. (彼はその部屋に誰も入れようとしない。)
例2:My father let me drive his car. (父は私が父の車を運転するのを許してくれた。)
※例2のletは過去形です(現在形ならMy father letsになります)。letは不規則動詞で、現在形、過去形、過去分詞ともにletです。
例3:Let me try once more. (もう一度やらせてください。)
※letの受動態は極めてまれで、be allowed toなどを用いるのが普通であるとされます(『ロイヤル英文法』旺文社,改訂新版,2000年,p. 389)。
make
1.make+目的語+原形不定詞で「…させる」の意味を表します。
I made him wait for a while. (私はしばらくの間彼を待たせた。)
※受動態では原形不定詞がto不定詞に変わります。
He was made to wait for a while.
2.make+目的語+過去分詞の用法もあります。お決まりの例文として次のものを暗記しておくとよいでしょう。もちろん、主語や時制などは文脈に応じて変化します。
I could make myself understood in English.(私の英語は通じた。/自分の言いたいことを英語で伝えることができた。←直訳すれば「私は英語で自分自身を理解させることができた」。)
have
1.have+目的語+原形不定詞、またはhave+目的語+現在分詞で使役(…させる)や容認(どうしても…させる/…させるわけにはいかない)、経験・被害を表します。
(使役)I had my secretary print out my e-mail.(秘書にメールをプリントアウトさせた。『ジーニアス英和辞典』大修館書店, 第5版, 2014年)
(使役)He had a taxi waiting. (彼はタクシーを待たせてあった。)
(容認)I won’t have you talk to me like that. (私はあなたがそんな口を利くのを許さないよ。)
(経験・被害)We’ve had this happen many times. (こんなことはこれまでに何度も起こった。『ロイヤル英文法』旺文社,改訂新版,2000年,p. 390)
(経験・被害)He got injured, but he had it coming. (彼はけがをしたが、自業自得だ。(「彼がそれ(けが)を来させた」→自業自得だ、当然の報いだ、自分でまいた種だ))
※上の例文から連想されるものとして、“Who are you to talk to me like that?” (私にそんな口の利き方をするなんて何様だい?)も覚えておくとよいでしょう。 . . . you to talk . . .のtoは、判断の根拠・理由を表すto不定詞の副詞的用法(「…するとは」「…するなんて」)です。
2.have(get)+目的語+過去分詞で使役・受動(…させる、…してもらう)や受動・被害(…される)を表します。くだけた言い方では have の代わりに get を使うことが多いです。
(使役・受動)I had my hair cut. (髪を切ってもらった。)
→大学受験英語などで、初心者が、「髪を切る」を“I cut my head.” (頭を切断した(??))とやってしまいがちで、「そうでなく、上のように言うのだよ」と先生に直されるお約束の?事項です。cutは不規則動詞で、現在形、過去形、過去分詞ともにcutですね。なお、以上で話はほぼ尽きていますが(大学入試問題をはじめ、試験で見かける“I had my hair cut.”は、ほぼ全ての例で、上記の意味で出ますが)、同じ“I had my hair cut.”でも、文脈によっては(例えば、寝ている間に友人が悪ふざけで、のような文脈ならば)下の「受動・被害」の意味になるかもしれません。
(受動・被害)I had my wallet stolen. (財布を盗まれた。)
※さらに,have(get)+目的語+過去分詞が完了(…してしまう)を表すことがあります。
Have your work done by noon. (昼までに仕事をやってしまいなさい。『新英和中辞典』第7版, 研究社, 2003年)
※letやmakeの受動態について上で言及しました。使役動詞のhaveは受動態にならないとされます。
get
get+目的語+to 不定詞で、「…させる」、「…してもらう」、「…するように説得する」などの意味を表します。目的語の後ろに原形不定詞ではなくto不定詞が来る点に注意が必要です。
I couldn’t get the DVD player to work. (DVD プレーヤーがどうしても動かなかった。)(『ジーニアス英和辞典』大修館書店, 第5版, 2014年)
You’ll never get me to agree. (僕を同意させることは絶対にできないだろう。『新マスター英文法』聖文新社,2008年,p.645)
help
help+目的語+原形不定詞(またはto 不定詞)で「人が…するのを助ける、手伝う」という意味を表します。目的語の後ろは原形不定詞も、to不定詞も両方OKである点に注意が必要です。
His advice helped me (to) get the job. (彼の助言が私の就職に役立った。)