suggestなどの後ろのthat節

仮定法は何かとややこしい事柄が多く、大学受験の英語などでも苦手に思う(思っていた)人が多い文法事項かと思います。本エントリーでは、仮定法の中でもTOEICに頻出の項目のひとつである、仮定法現在の主な用法などについて解説します。

はじめに:仮定法のポイントまとめ

仮定法現在

現在または未来の不確実なことを表す。動詞の原形のかたちを取る。

If need be, I will give you some medicine. (必要なら、薬をいくらかあげますよ。)

ただし、現代英語では、仮定法現在が使われるのは本エントリーの本題に書いた場合であり、条件節(Ifなどの節)の中で使われるのは慣用句以外はまれ(仮定法現在でなく直接法現在が使われる)とされます。上のIf need beは慣用句で「必要なら、必要とあらば」といった意味を表します。

直接法現在を使う場合、上の例文は以下のように言い換えることができます。

If (it is) necessary, I will give you some medicine.

仮定法過去

現在の事実に反する仮定、または、現在もしくは未来についての可能性の乏しい想像を表す。条件節の動詞は過去形(※)。帰結節の動詞は基本的に「過去形助動詞+原形不定詞」。

ただし、条件節のbe動詞は人称に関係なくwere. だが現在、If I were you(もし私があなたなら), as it were(いわば)などの決まり文句以外は1人称単数と3人称単数ではwasを使うことが多いとされる。

このあたりから、「仮定法過去」という名称で、動詞の過去形を用いつつ、現在の事実に反する仮定を表す…ややこしい!となりがちかと思います^^; 既に述べた仮定法現在も、「現在」といいつつ、動詞は原形(結果として同じになる場合もありますが、「現在時制」でなく「原形」)である点など、やはり、「ちょっと覚えづらい」「混乱しやすい」単元かもしれません。

If I were a bird, I would fly to the island. (もし私が鳥なら、あの島へ飛んで行くのに。(実際は鳥ではなく、飛んで行けない))

仮定法過去完了

過去の事実に反する仮定や想像を表す。条件節の動詞は過去完了。帰結節の動詞は基本的に「過去形助動詞+have+過去分詞」。

If I had been a bird, I would have flown to the island. (もし私が鳥だったなら、あの島へ飛んで行ったのに。(実際は鳥ではなく、飛んで行けなかった))

本題:suggestなどの後ろのthat節

「はじめに」が長くなりました(が、重要な事項でもあります)。ここからが本エントリーの本題です。

1.仮定法現在は、前述のとおり、現在または未来の不確実なことを表すもので、形は動詞の原形です。主に、suggestやdemand などの動詞、necessaryやessential などの形容詞の後ろに来る that節の中で用います。that節の中で、仮定法現在ではなく、should+原形不定詞を用いることもできます。その場合は“He suggested that I should be the leader.”となります。例2も同様です。

例1:He suggested that I be the leader. (彼は私がリーダーになるよう提案した。)

例2:It is necessary that Mr. Kato go the U.S. (加藤氏は米国に行く必要がある。)

直説法(普通の平叙文や疑問文、感嘆文)では、be動詞は主語の人称や単複、文の時制に応じて変化します。そのため、上の例1で、“I be the leader”のような表現が奇異だと感じる方もいるかもしれませんが、正しい形です。

さて、ここからもいろいろあります。本エントリーのタイトルを「仮定法現在」などでなく「suggestなどの後ろのthat節」とした理由もそこにあります。

2.上述のとおり、that節の中で、仮定法現在ではなく、should+原形不定詞を用いることもできます。

例1:He suggested that I should be the leader. (彼は私がリーダーになるよう提案した。)

例2:It is necessary that Mr. Kato should go the U.S. (加藤氏は米国に行く必要がある。)

3.insistやsuggestなどの動詞の後ろのthat節では、仮定法現在(またはshould)が使われる場合も、直説法が使われる場合もあります。その場合、両者で意味が異なることがあります。定評のある『ロイヤル英文法』には、たとえば次の例文が載っています。

I suggested that the meeting(should)be postponed. (私は会議を延期するよう提案した。)[筆者補足:仮定法現在。会議が延期されるのは未来の不確実な出来事](『ロイヤル英文法』旺文社,改訂新版,2000年,p.458)

I suggested that the meeting had been postponed. (私は会が延期になったことをほのめかした。)[筆者補足:直接法。会が延期になったのは事実(「ほのめかした」よりもさらに過去の事実)](同書、p.459)

また、やはり優れた文法書である『新マスター英文法』は、あることを事実として述べるものが直接法であり、一方、実現(実行)すべきこととして述べるのが仮定法現在である旨を指摘したうえで、以下の例文を対比しています。

She insists that he is innocent. 〔直接法現在〕(彼は無実だと彼女は言い張っている。)(『新マスター英文法』聖文新社, 全面改訂版, 2008年, p. 463)

She insists that he [should] come. 〔仮定法現在〕(彼が来ることを彼女は強く求めている。)(同上)

参考までに、「suggest+人+that節」という形はOKか?:「SVO+that節」の型を取れる動詞、取れない動詞という記事もあわせてお読みください。

would ratherって覚えてますか?

would ratherという表現があります。大学受験英語にも出てきますが、割と難易度が高めだ(英語以外の科目も勉強しなきゃならないし、would ratherを覚え切るくらい英語をやり込む受験生は多くない)と思います。TOEICでも見かけますので、本エントリーで解説したいと思います。

would rather(またはhad rather)+原形不定詞(※)の基本的な意味は「むしろ~したい」です。ポイントを以下に整理したいと思います。

原形不定詞とは、動詞の原形をそのまま用いるものです(要するに動詞の原形です)。

1.基本的な例

“How about a coffee?” “I’d rather have a cup of tea.” (「コーヒーはいかがですか?」「むしろ紅茶が欲しいな。」)

※上の例文のように、wouldはI’d、he’dのように短縮されることが多いです。ですが次のように、短縮されない例もあります。

I would rather quit than change my club. (部活を替えるくらいならむしろ辞めたい。)

過去の「~したかった」はwould rather have+過去分詞で表しますが、あまり用いられないとされます(『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.506-507)。

2.疑問文はWould you rather~?否定形はwould rather not~の形を取ります。なお、話が広がってしまいますが,had better notneed not(※),ought not toなど、notの位置を問う問題は英語の試験全般でよく見かけます

(※)need notは助動詞としてのneedの場合。

例:You need not speak loud.

本動詞としてのneedの場合、以下の例のような形になります。

例:You don’t need to speak loud.

3.冒頭に述べたとおり、wouldの代わりにhadが来ることがあります。さらに、ratherの代わりにsoonerが来るなど、いろいろな変形があります。以下の形はみな「(…するくらいなら)むしろ~したい」という、同じ意味を表します。

would rather ~ (than …)
would sooner ~ (than …)

had rather ~ (than …)
had sooner ~ (than …)

would as soon ~(as …)
had as soon ~(as …)

例:I had sooner stay at home than go there. (そこへ行くくらいなら家にいた方がましだ。)

4.would ratherの後に、原形不定詞でなく節が来ることがあります。この場合、①節内の動詞は過去形になる②thatは省略するのが普通です。

例:I’d rather you told me frankly what you think. (思っていることを率直に言ってほしい。)