TOEICの難問?circle, roll, spinの区別

今回は、TOEICの過去問で見かけた難問?を取り上げたいと思います。

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST4 PART5」108(p. 110)に、日本語でいうと次のような意味の文章が出てきます。

今年、収穫パレード(harvest parade)は広場をスタート・ゴールにして村を一周します。

出題されている英文は次のとおりです。

This year the harvest parade will —— the village, beginning and ending at the town square.

選択肢の中にはcircleやroll,spinといった単語が並んでいます。言われてみれば、どれも「回る」っぽい意味のような気がしますが、正解はどれでしょう・・・?

正解はcircleです。rollには自動詞の用法も他動詞の用法も両方あります。この場合は後ろに前置詞がないので、the villageを目的語とする他動詞の用法と解さねばなりません(←考えてみれば基本的なことですが、自動詞か他動詞かを見分ける際のポイントです)他動詞のrollは「(ボールなどを)転がす」という意味になります。

例:He rolls a barrel. (彼はたるを転がしている。)

spinも同様です。spinにも自動詞、他動詞、両方ありえます。他動詞のspinは「(…を)回す、回転させる」という意味です。

例:She spins a coin. (彼女はコインを指ではじいて回す。)

一方、circleは、他動詞で「(~の)まわりを回る、旋回する」という意味があります。上の問題は、「村を転がす」「村を回転させる」では明らかにおかしいので、circleが正解(circle the villageで「村を一周する」)ということになります。目的語の方を動かすのか(この場合、転がしたり回したりするのか)、それとも、目的語ではなく主語の方が動くのか(この場合、目的語「村」の周りを主語「パレード」が回る)を見分ける、のようなイメージです。

一見、似たような意味の単語の中から、正確な英文をつくるために適切なものを選ばねばならないという問題です。TOEICでは難問の部類だと思います。一つ一つ覚えて、自分の引き出しを増やしていくしかないかな、といったところです。

TOEICのひっかけ?teachの指す範囲

今回は、TOEICの過去問で見かけたひっかけ?を取り上げたいと思います。

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART7」168-171(p. 95)に、次のような意味の文章が出てきます。

Carmen博士は工学部に19年間在職しました。彼は専任教授として高等数学などを10年間教えました(He served as a full-time professor for ten years, teaching advanced mathematics…)。その後、学部長に選任され、残り9年間をその役職で任に当たりました。学部長に在任中、カリキュラムを再編するためのチームを率いました。

上のような意味の文章が登場した後、「Carmen博士は工学部で何年間教えたでしょうか(How long did Dr. Carmen teach…)?」という問題が出題されます。選択肢は(A) 6年、(B) 9年、(C) 10年、(D) 19年です。さて正解はどれでしょう?

模範解答では、正解は(C) 10年とされています。模範解答に書いてあるので、そうなのでしょうが、「大学の学部長や、一般に学校の校長なども、管理職という役割を通じて教員の一人として学校や児童生徒、学生に貢献している。そう考えると、管理職も「先生」であり、広い意味で「教えている」とは言えないかな…」とも思えてきます(少なくとも当サイト管理人にはそう思えてきました)。よって(C) 10年はひっかけで、正解は(D) 19年なんじゃないかな?と最初は思ったのですが、話は逆で、(D) 19年がひっかけ?で(または、TOEICの作問者としては特段ひっかけのつもりもないかもしれません)、正解は(C) 10年とされています。

日本および韓国で販売されている公式問題集や過去問題集について丹念に調べていくと、ごくまれに、模範解答が間違っているというコメントがネット書店のカスタマーレビューに書かれています。が、上の問題に関しては、「(C) 10年が正解」はおそらく正しいです。経験上、TOEICは「ひっかけであること自体が非常に分かりづらいひっかけ」のような問題は出してきません。上記も、「彼は専任教授として高等数学などを10年間教えました(He served as a full-time professor for ten years, teaching advanced mathematics…)」と書いてある以上、「この場合、teachは10年」が正解なのでしょう。

君はsay, speak, talk, tellの違いを説明できるか?

say, speak, talk, tellの違いを説明できますかと聞かれたら、あなたはできますか?

優れた辞典として定評のある『ジーニアス英和辞典』(大修館書店,第5版,2014年)は次のように解説しています。

sayは伝えるべき内容を必要とし、「言葉を発する」の意。

tellは伝えるべき内容だけでなく話し相手も必要で、「人に情報を伝える」の意。

speakは話し相手がいるかどうかに関係なく「言葉になるように音を出す」の意。

talkは話し相手が必要で「言葉を通じてコミュニケーションを取る」ことを表す。

こうした解説は興味深いですし、さらに、各辞典や文法書を比較してみると面白い発見があるかもしれません。

が、各種の英語資格試験などでsay, speak, talk, tellの違いを問う場合、どういう問題が出るかはおおよそ相場が決まっています。例えば次のような問題です。空所に入る語として適切なのはどれでしょう?

He —— me good night. (彼は私にお休みを言った。)

(A) said (B) spoke (C) talked (D) told

正解は(D) toldです。tellは第4文型SVO₁O₂をつくることができます。その際、「…に」に当たる最初の目的語O₁に人を、後続の目的語O₂に事柄を取り、「人に…を話す」という文を成立させることができます(※)。

※なお、ややこしいですが、この最初の目的語O₁が間接目的語。後続の目的語O₂が直接目的語です。

そのほかの選択肢say, speak, talkはいずれも、基本的に、人を目的語に取りません。例えば、He said me good night. とはいわず、He said good night to me. と表現します。同様に、say, speak, talkに関しては次のような例文が正しいです。

He said good night.

He said, “Are you tired?”

He said to me, “Are you tired?”

“Hello! May I speak to Nancy?” (電話で)「もしもし、ナンシーさんはいらっしゃいますか」

She speaks English fluently.

Who are you to talk to me like that? (そんな口の利き方をするなんて何様なの?:決まり文句。大学受験参考書でよく見かける印象があります)

人を目的語に取るのはtell. say, speak, talkはtoが必要」「tell人,say to人, speak to人,talk to人」「tell人。ほかはto 人」と、何回も暗唱して覚えましょう。多少無理やり?かもしれませんが「アルファベット順に4つを並べたとき、人を目的語に取るのは最後の4つ目のtell」と覚えても良いかもしれません。…改めてこう書いてみると無理やりな覚え方かもなあとも感じますが、ともかく覚えることが資格試験の合格や、英語を使いこなせるようになることのきっかけ、とも言えますので、なりふり構っていられないようにも思います。

なお、「say, speak, talkはいずれも、基本的に、人を目的語に取りません」と上に書きました。ところが例外(のように見える事項)もあり、

I talked my father into buying me a camera.

父を説得してカメラを買ってもらった。(=I persuaded my father to buy me a camera. 『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

上のような形で人を目的語に取る場合もあります。talkを辞典で引くといくつか載っていますので、興味があれば覚えておきましょう。

また、

He said he’ll be back tomorrow. (彼は明日帰ってくると言った。)

上の例文では、saidとheの間のthatが省略されています。その結果上の文になるわけで(上の文に問題はないわけで)、sayの次に人は来ないとは言えません。あくまで、sayは人を目的語に取らない、と言えるのみです。

2023.09.06追記:このエントリーでは、上記のように、各種の英語資格試験などでsay, speak, talk, tellの違いを問う場合、どういう問題が出るかはおおよそ相場が決まっている、との前提の下、それらに話を絞りました。

このエントリーの話題に関連して、定番の文法書『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.395)は次のとおり述べ、例文も複数挙げています。

間接話法などで使われる伝達動詞は一般に他動詞であるが、〈目的語+目的語[節]〉のように2つの目的語をとるのは ask、tell など少数の動詞で、ほかは say to me that … のように to などの前置詞が必要である。

確かにaskも、最初の目的語O₁に人を、後続の目的語O₂に事柄を取り、「人に…を尋ねる、聞く」という文を成立させることができます。

I asked him whether he knows her. (彼女を知っているかどうか、私は彼に尋ねた。)

I asked him his name. (私は彼に名前を尋ねた。)