時・条件を表す副詞節の中では、未来のことでも現在時制でも書きましたが、現在完了は、過去に起こった動作・状態を現在と結び付けて述べる場合に用いるもので、現在に力点が置かれます(例:「昔から今までずっと…している」)。そのため、明確な過去を表す副詞(句)と現在完了は一緒に用いることができません。
He came back from America yesterday. (以下は誤り:He has come back from America yesterday.)
現在完了と一緒に用いることができない副詞として、yesterdayやago、the other dayなどがよく挙がります。また、以下のようなwhen で始まる疑問文も、過去を尋ねるものであるため、「完了」の意味の現在完了と一緒に用いることができません。
When did he return home? (以下は誤り:When has he returned home?)
一方、現在完了と一緒に用いられる副詞もあります。注意したいものに、例えばbeforeがあります。日本語で考えると混乱しそうになりますが、beforeは意味次第で現在完了と過去形、どちらとともにでも使われます。
I have met him before. (以前に彼と会ったことがある。)
上の例でbeforeを訳せば「以前に」ですが、これは現在を基準にした「以前に」であり、現在完了と一緒に用いることができます。具体的に何年前という場合は“I met him two years ago.” のように過去形になります。
なお、『新英和中辞典』(研究社, 第7版, 2003年)には「beforeが単独で用いられる時、動詞は現在完了・過去完了・過去のいずれにも用いられるが、the day before、two days before などの副詞句の場合は動詞は過去完了を用いる」という指摘があります。
さらに、本エントリーで指摘しておきたいのは、タイトルのとおりpreviouslyです。上記のbeforeと同様の考え方で,previouslyは現在完了と一緒に使うことができ、TOEICでもこの点が問われる場合があるので注意が必要です。
He has previously worked at Google. (彼は以前Googleで働いていた。)
現在完了とともに用い、「かつて(…したことがある)」のような意味を表す副詞にeverがありますが,その意味のeverは疑問文や否定文で用います。平叙文や肯定文では用いません。そのため、この例文でpreviouslyの箇所が空所になっており、everか?previouslyか?を選ばせるような問題が出た場合、正解はpreviouslyです。
なお、todayやthis morning、this summer などは、まだその時期が過ぎていなければ現在完了とともに使うことができます。定評のある『ロイヤル英文法』から例を引いてみたいと思います。
I haven’t read today’s paper yet this morning. (けさの新聞をまだ読んでいない)〔午前中に言う場合〕(『ロイヤル英文法』旺文社, 改訂新版, 2000年, p. 422)
I didn’t read today’s paper this morning.〔午後に言う場合〕(同上)
本エントリーの主題でもある、「previouslyは現在完了と一緒に使うことができるかどうか」などは、日本語で考えるとどうしても混乱しがちです。文法書で論理を押さえつつ、暗唱できるくらい例文をたたき込んで、感覚的に覚えてしまうのも有効な方法です。