norという単語を目にした場合、反射的に「…もまた~ない」という意味を思い浮かべる方が多いかと思います。それで正解です。一方、「eitherにも「…もまた~ない」という意味があるんじゃなかったっけ?」と思う方もいるかもしれません。それも正解です。
以上は多くの方が思いつくかもしれませんが、nor, either, neither(norと一緒によく用いられますね)それぞれの使い方について、正確に説明できますか?本エントリーではそれらについて整理します。
※nor, either, neitherは、深掘りすると、かなり細かい事項も出てきます。以下では「…もまた~ない」に関する主な意味・用法を中心に、主に基本事項について解説します。
nor
接続詞で、「AもBも…ない」「…もまた~ない」の意味を表します。以下のパターンがあります。
1. (neither または not と相関的に用いて)AもBも…ない
He neither drinks nor smokes. (彼は酒も飲まなければたばこも吸わない。)
She is neither tall nor short. (彼女は背が高くも低くもない。)
※「either A or B (AかBのどちらか)の否定文と同義」です。
He doesn’t either drink or smoke. (“He doesn’t drink or smoke.”も可)
She isn’t either tall or short. (“She isn’t tall or short. ”も可)
※上の見出しに「neitherまたはnot」と書きましたが、notとnorが相関的に用いられるケースとは、例えば次のような場合です。
Not a man, a woman, nor a child, is to be seen. (男も女も子供も見えない。『新英和中辞典』研究社, 第7版, 2003年.強調、当サイト管理人)
※マニアック?ですが、neither more nor less than(…というほかはない、まさしく…)という慣用句を紹介しておきます。
It is neither more nor less than absurd for him to try to bribe me. (彼が私を買収しようとするなんてばかばかしいというほかはない。『総解英文法』美誠社,1970年,p.320)
2. (否定の節や文の後に用いて)…もまた~ない
この用法では,norの後に(助)動詞と主語の倒置が起きます。
He hasn’t arrived, nor has his wife. (彼は着いていませんが、奥さんもまだです。)
I never saw him again, nor did I regret it. (私は二度と彼とは会わなかったし、それを悔やみもしなかった。)(『ルミナス英和辞典』研究社, 第2版, 2005年)
→「1.」、「2.」それぞれの見出しに書いたとおり、上の例では、neitherやnotと一緒に用いたり、否定の節・文の後に用いて、norは「…もまた~ない」などの意味を表しています。したがって、ある問題文が意味のうえで否定的な内容であっても、上の形に該当しなければ、norを選ぶべきではありません。
Lack of money made it difficult for him to buy food or drink. (お金がなかったので、食べ物や飲み物を買うのは彼には難しかった。)
もしこの例でorが空所になっており、選択肢にorだけでなくnorがある場合、意味的にnorを選びたくなるかもしれませんが、そうではなくorが入ります。
either
1.形容詞
Either book will do. (どちらの本でもよい。『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p. 143)
なお、上の場合、Eitherは不定冠詞相当語です。さらに不定冠詞をつけてEither a bookとする必要はありません(そのように書くと誤りです。ただし、下記「3.」のeither A or Bの用法で、たまたまeither a book or a journalなどの形になる場合はあります)。
2.代名詞
Either of the two books will do. (二つの本のどちらでもよい。)
※3つ以上のものについてはanyを用います。当サイト管理人の個人的感覚ですが、このあたり、ややこしいですが、一つ一つ覚えていきましょう。
Any of the three books will do. (三つの本のどれでもよい。)
3.副詞
次に、副詞(either A or Bの用法は接続詞とみなされることもあります)のeitherについて解説します。まずお決まりは,either A or Bで「AかBのどちらか(どちらでも、 いずれかを)」です。もしうろ覚えでしたら、both A and B(AもBも(両方とも))や上記「1.」のneither A nor B(AもBも…ない)など(※)とセットで必ず覚えましょう。
※本エントリーのテーマからはそれますが、各参考書や文法書には、not only A but (also) B (AだけでなくBも)なども載っていますね。
本題に戻ります。副詞のeitherは、否定文で「…もまた~ない」の意味を表すことができます。「…もまた~ない」という日本語だけ暗記しているとnorの用法と混乱して覚えづらいので注意が必要です。例文を見てみましょう。
例1:“I don’t like dogs.” “I don’t either.” (「犬が好きではない。」「私もだ。」)
上の例文の第2文でNorを使いたい場合、“Nor do I.”と言い換え可能です。“Neither do I.”や“Me neither.”, “Me either.”, “Nor I either.” とも言い換え可能です。eitherもnorも「…もまた~ない」の意味を表すわけですが(上の例では「私も好きではない」、「私もそうだ」(※)といった訳になります)、形の違いを押さえたいところです。
※「私もそうだ」は、肯定とも否定とも取れる表現ですが、この場合は否定の意味で「私もそうだ」です。曖昧さをなくしたい場合は「私も好きではない」と訳す方がよいでしょう。
『新英和中辞典』(研究社, 第7版, 2003年)には、norとeitherが同じ文の中で使われる、次の例文も載っています。
例2:“I won’t go.” “Nor I either.” (「私は行きません。」「私も行かない。」)
この例文の第2文は、例1と同様、“I won’t (go) either.”や“Nor will I.”, “Neither will I.”, “Me neither.”, “Me either.” と言い換え可能です。
neither
1. 形容詞で「どちらの…も~でない」
Neither answer is good. (どちらの答えも良くない。)
上の例文からも分かりますが、この用法ではneitherは単数名詞を修飾します。日本語だけで考えると、「「どちらも…ない」なのに単数名詞なの?」と混乱しやすいので注意が必要です。
さらに、上の例文のような場合、“Either answer is not good.”とは言わない、という点にも注意が必要です(2023.08.28追記:この点は『新英和中辞典』(研究社, 第7版, 2003年)を参照して書きました。ところがネットを検索すると、上の言い方はけっこうたくさんヒットします。本来の正しい英語とはいえないが、現在、実際は用いられる場合もある、といったところでしょうか)。
2. 代名詞で「どちらも…でない」
I believe neither of the stories. (どちらの話も私は信じない。)
bothの対極(※)であるといえます。上の例文は、“I believe both of the stories.”と正反対の意味になります。“I don’t believe either of the stories.”といってもいいです。似たようなことを上にも書きましたが、当サイト管理人の個人的感覚では、このあたり、ややこしいというか大変ですが、一つ一つ覚えていきましょう。
※『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p. 230)は「neitherはbothの否定である」としています(同旨、『英文法解説』改訂3版,金子書房,1991年,p.67)。一方、『新マスター英文法』(聖文新社,2008年,p.176)は「neitherはeitherの否定である」としています(同旨、『総解英文法』美誠社,1970年,p.153)。この点に関しては、後者が正しいように思います。both(両方とも)を否定するには、両方とも否定する必要は必ずしもなく、少なくとも一方を否定すればよいからです。それに対して、either(どちらか一方)は、「どちらも…ない」と指摘されれば、否定されます。つまり「neitherはeitherの否定である」が正確な解説のように思います。
3. 副詞(3.1は接続詞と見なされることもあります)
3.1 (norと相関的に用いて)AもBも…ない
→これについてはnorの箇所を参照してください。
3.2 (否定の文や節のあとに用いて)…もまた~ない
eitherの箇所で既にチラッと登場していますが、「neither+be(助)動詞+主語」の順になります。例を示せば次のとおりです。
“I’ve never been to Germany.” “Neither have I.” (「私はドイツへ行ったことがありません。」「私もありません。」)
“I can not dance well.” “Neither can I.” (「うまく踊れないよ。」「私もだよ。」)
上の例の第1文は,“Nor have I.”や“I haven’t either.”, “Me neither.”, “Me either.”, “Nor I either.”と言い換え可能です。第2文は、“Nor can I.”や“I can’t either.”, “Me neither.”, “Me either.”, “Nor I either.”と言い換え可能です。