TOEICの「筋(すじ)」を読む:深く考え過ぎない

TOEICの「筋(すじ)」

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST4 PART7」設問161-163(p. 123)は、「かつて造船所だった所に遊歩道をつくることになりました。そこにはレストラン、たくさんの小売店(a dozen retail businesses)、ライブパフォーマンスが行われる中庭(patio)ができる予定です」のような内容です。まあ、TOEICでよく見かけるパターンの文章だと思います。

本エントリーで強調したいのは、TOEICの「筋(すじ)」を読むこと、TOEICの「流れ」に沿って回答することです(※)。…書いていて、うまく言葉にするのが難しいなあと感じるのですが、一つの側面(あくまで一つの側面)をシンプルにいえば「深く考え過ぎない」ともなりましょうか。

(※)TEX加藤先生のブログに「TOEICで満点を取るための秘訣は、ずばり、「TOEICと一体化すること」です」という記述がありました(満点に必要なRの正答数 強調、当サイト管理人)。TEX加藤先生先生と同じ境地だ、のような不遜なことは申せませんが、どこか相通じる気がいたします。

上のような内容の英文の後に、設問が続きます。一問目(設問161)は「予定に含まれていないものは次のうちどれでしょうか?」というもので、選択肢は(A) Office spaces, (B) Entertainment, (C) A shopping section, (D) Eating establishments(飲食施設)です。

(B) Entertainmentにはライブパフォーマンスが、(C) A shopping sectionには小売店が、(D) Eating establishmentsにはレストランが該当しますので、正解は(A) Office spaces(事務所スペース)です。

以上は、シンプルに考えればサクッと正解できるのですが、「小売店(retail business)で働く人たちも、事務的な仕事をせねばならないときがあるだろうから、お店の中に事務所スペースがあるだろう」のように考え込んでしまうと、(A) Office spacesを選べずに、不正解になってしまいます。視覚的・直感的に、小売店(retail business)のbusinessと(A) Office spacesのofficeが何となく関連があるようにも見えて、少しだけひっかけ問題の要素もあります。そのことも、考え込んでしまうとダメになるのに一役買っています。

なお、patioやestablishmentはTOEICあるある英語です。

patio:中庭,テラス

establishment:権力層、支配者層という意味もありますが,上のeating establishmentsのように、TOEICでは機関、施設、敷地、建物、民間組織という意味がよく問われます。

「深く考え過ぎない」かつ「ちゃんと確実に英文を読む」(両者は別のもの)

上記の設問161-163では続けて、「以下のうち、本文から示唆されるものはどれですか」のような問題があります(設問162)。選択肢に「造船所で働いた人々の記念碑を建てる」というものがあります。一方、本文には「造船所での労働を後世の人に知ってもらうために、造船技師たちは、造船所だった場所の入り口付近の壁に名前を彫り付けた」という趣旨の記述があります。上の選択肢「造船所で働いた人々の記念碑を建てる」を選ぶと不正解になります。この設問は、急いで解いている人に対するひっかけの一種のようにも思えます。この場合は、「深く考え過ぎてはダメ」ではなく、「ちゃんと確実に英文を読めなければダメ」という例です(両者は別のものです)。すっ飛ばしながらザっと読んだだけでは間違えてしまいます(英語でなく、上のような日本語で文章を読んだとしても、うっかりすると間違えてしまいそうです)ので注意が必要です。

TOEICのひっかけ?teachの指す範囲

今回は、TOEICの過去問で見かけたひっかけ?を取り上げたいと思います。

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART7」168-171(p. 95)に、次のような意味の文章が出てきます。

Carmen博士は工学部に19年間在職しました。彼は専任教授として高等数学などを10年間教えました(He served as a full-time professor for ten years, teaching advanced mathematics…)。その後、学部長に選任され、残り9年間をその役職で任に当たりました。学部長に在任中、カリキュラムを再編するためのチームを率いました。

上のような意味の文章が登場した後、「Carmen博士は工学部で何年間教えたでしょうか(How long did Dr. Carmen teach…)?」という問題が出題されます。選択肢は(A) 6年、(B) 9年、(C) 10年、(D) 19年です。さて正解はどれでしょう?

模範解答では、正解は(C) 10年とされています。模範解答に書いてあるので、そうなのでしょうが、「大学の学部長や、一般に学校の校長なども、管理職という役割を通じて教員の一人として学校や児童生徒、学生に貢献している。そう考えると、管理職も「先生」であり、広い意味で「教えている」とは言えないかな…」とも思えてきます(少なくとも当サイト管理人にはそう思えてきました)。よって(C) 10年はひっかけで、正解は(D) 19年なんじゃないかな?と最初は思ったのですが、話は逆で、(D) 19年がひっかけ?で(または、TOEICの作問者としては特段ひっかけのつもりもないかもしれません)、正解は(C) 10年とされています。

日本および韓国で販売されている公式問題集や過去問題集について丹念に調べていくと、ごくまれに、模範解答が間違っているというコメントがネット書店のカスタマーレビューに書かれています。が、上の問題に関しては、「(C) 10年が正解」はおそらく正しいです。経験上、TOEICは「ひっかけであること自体が非常に分かりづらいひっかけ」のような問題は出してきません。上記も、「彼は専任教授として高等数学などを10年間教えました(He served as a full-time professor for ten years, teaching advanced mathematics…)」と書いてある以上、「この場合、teachは10年」が正解なのでしょう。

groceriesには食料が含まれ、grocery storeでは食料品が売っている

唐突なタイトルになってしまいました(超古典的ですが「バナナはおやつに入りますか」的な)。

groceries(食料雑貨類)、grocery store(食料雑貨店)はTOEICでは頻出です。これらの存在を知ってはいても、うろ覚えだと、「あれ、grocery storeって雑貨屋のことだっけ…?grocery storeに食料って売っている?「雑貨」屋なので食料は売っていない…?」となってしまい、正確に覚えていれば落とさないはずの問題でミスをしてしまいます。

当サイト管理人は実際、食料の付近に人物が立っている光景を指して「彼はgroceriesを見ています」「彼女はgrocery storeにいます」のような選択肢を設ける問題に出くわしたことがあります。ほかにも紛らわしい選択肢があり、「意味的に、groceriesには雑貨だけでなく食料が含まれる。grocery storeは雑貨だけでなく食料品も売る」ことを知らないと間違えてしまいますので注意が必要です。

“I hope that all is well.” や “I hope that all are well.”など

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART6」139-142(p. 85)に“I hope that all are well.”という表現が出てきます。

wellには副詞や形容詞などの用法があり、各辞典には例えば次のような用例が載っています。

(副詞の用例)

Everything is going well with me. (すべてうまくいっています。『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

(形容詞の用例)

Things are well enough. (情勢はまずまずのところだ。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

All is not well. (すべてがうまくいっているわけではない。『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

All [Everything] is well with us. (私たちは万事がうまくいっている。(同上))

All’s well that ends well. (終わりよければすべてよし。(ことわざ。2つめのwellは副詞。Shakespeareの戯曲の題名にもなっている)(同上))

英辞郎on the WEB Proでは、レターやEメールの冒頭の文に使われるという趣旨のラベルを付与したうえで、次の例文を掲載しています。

I hope all is well with you. (全て順調であることを願います。◆「いつもお世話になっております」の代わりに使える 英辞郎on the WEB Pro

ということで、次の表現は決まり文句的に覚えてしまうと良いと思われます。

I hope all are well. (半角のクォーテーションマーク(二重引用符) 「 “” 」でキーワードを囲んでGoogle検索をすると、本エントリー作成時点で7万4100件ヒット)

I hope that all are well. (同じ条件で58万1000件ヒット)

I hope all is well. (同じ条件で108万件ヒット)

I hope that all is well. (同じ条件で101万件ヒット)

I hope you are well. (同じ条件で932万件ヒット)

I hope you are doing well. (同じ条件で325万件ヒット)

ところで、上に紹介した『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART6」139(p. 85)は、少しやっかいな設問です。冒頭が空欄になっており、正解は“I hope that all are well.”です。これだけなら上記の事項を覚えていれば解けるのですが、選択肢の中に“Thanks for the generous contribution.”(惜しみない貢献をありがとうございます。)という一文が紛れています。この表現も、レターやEメールの冒頭の決まり文句としてもOKであるように思えてしまいます(「いつもお世話になり、ありがとうございます」的な決まり文句に見えてしまいます)。

“Thanks for the generous contribution”とグーグル検索すると4万6500件ヒットするので、不自然な英語ではなさそうです。不正確な英語がネット上に拡散することはありうるので、目安にすぎませんが、「 “” 」でキーワードを囲んでGoogle検索をした際のヒット数があまりに少ない場合、不自然/不正確な英語の可能性が高いです

ですが、検索結果の内容をよく見ると、レターやEメールの冒頭の決まり文句というよりは、具体的に何かをしてもらった際の御礼の言葉だろうと推測できます。そのため“Thanks for the generous contribution.”ではなく“I hope that all are well.”になる、という構成になっています。高得点を狙う場合は注意したい設問です。