当サイトは通常、TOEICの公式問題集などからヒントを得て、オリジナルの例題を作って解説しています。ですが本エントリーでは、『公式TOEIC Listening & Reading 問題集6』(国際ビジネスコミュニケーション協会,2020年)でとても参考になる良問を見つけたので、解説してみたいと思います。「TEST1 PART5」の117(p. 43)です。そこでは、次の英文の空所に入る語として適切なものを選びなさいとして、選択肢が4つ提示されています。
Customers —— prepaid tickets are encouraged to use the express kiosk.
(A) picking up
(B) picked up
(C) pick up
(D) to pick up
同書別冊の解答・解説には、pick up …は、上の文では、「…を受け取る」という意味であることなどが書かれています。ですが、そのことを正確に知らなくても、以下のようにして正解を導けます。
上の文を読み始めると“are encouraged to”(encourage … to doで「…に~するよう勧める」)(※)とあるので、いずれも複数名詞である、Customersまたはticketsが主語だと予想できます。
また、“are encouraged to”に続けて、“be used”ではなく、“use”とあります。ということは、“are encouraged to”(※)の主語になるのはticketsではなくCustomersである(「チケットが利用される」ではなく「お客様が利用する」的な文だと考えないとつじつまが合わない)と考えることができます。すなわち、「お客様が…した前払いチケット」のような主部ではなく、「前払いチケットを…するお客様」のような主部であると考えられます。
※正確でなくても良いので、「何かが勧められる、的な感じ」のように、ぼんやりとでも意味が分かっていたいところです。
以上のように考えると、正答を絞り込めてきます。(C) pick upは不適切です。pick upもare encouraged toもどちらも述語動詞、という形は変だからです。(D) to pick upもダメです。「pick upするためのお客様」では、文の意味が不明になってしまうためです。つまり、(C)とは違って、(D)は文法的には成立するかもしれませんが、意味的にダメです。ドンピシャではない例えですが、「四角い丸」という表現は、表現としては成立するかもしれないが意味不明、という話と似ています。
よって、(A) picking upか(B) picked upのどちらかが正解ということになります。pick up …はここでは「…を受け取る」という意味ですが、カタカナ言葉のピックアップ(何かを選び出すこと)がイメージできていれば、本問の場合は何とかなります。「ピックアップされるお客様」は変であり、「…をピックアップしているお客様」「…をピックアップするお客様」のような意味になると考えざるを得ないからです。すなわち(A) picking upが正解になります。
以上、本問の解法を整理すると、タイトルのとおり、主語は何か?を見極めつつ意味を考えるということになりますね。
なお、express kioskは「自動発券端末機」という意味です。kioskには、駅前や広場、公園などにある新聞、雑誌、たばこなどの売店という意味のほか、公共施設や街頭などに設置されている情報端末という意味があります。百聞は一見に如かずで、“express kiosk”(※)または単にexpress kioskでGoogleの画像検索をすると分かります。
※ほかのエントリーでも書いたことがありますが、半角のクォーテーションマーク(二重引用符) 「 “” 」でキーワードを囲んでGoogle検索をすると、入力したキーワードの順番で完全一致検索ができます。