「自動詞と他動詞」や「目的語」は基本事項と見なされていると思いますが、TOEICで点数を取ろうとする場合、なめてかかれないポイントです。このエントリーでは、いくつかの単語を例に取り、この点を掘り下げてみたいと思います。
はじめに
簡単にいえば、例えば以下の1のように、「…を」を必要とする動詞が他動詞、必要としない動詞が自動詞だと覚えればよいです。
1. He encouraged me to try again.(彼はもう一度挑戦するよう私を励ました。encourageは他動詞、meが目的語)
ただし、「…を」のような意味を表す語が一緒に用いられている、イコール常に他動詞と目的語、とは限りません。例えば次の2をご覧ください。
2. You should not run in the hall.(廊下を走るべきではありません。)→日本語で考えた場合「廊下を」でも、runはこの場合自動詞、in the hallは動詞runを修飾する副詞句です。
例文1でmeをカットし、“He encouraged to try again.”のようにした場合、彼が誰を励ましたのかが不明で(さらに言えば、もう一度挑戦するのが誰なのかも不明で)、文が成立しません。一方、例文2でin the hallをカットし、“You should not run.”としても、意味は変わってしまいますが、文としては成立します。以上の違いがあります。
手短ですが、このあたりが「自動詞と他動詞」や「目的語」の超・まとめです(参考:自動詞/他動詞の知識と基本的な語彙力で即答する!:『公式TOEIC Listening & Reading 問題集5』の良問)。次に応用例を見ていきます。
burdenとimpose:目的語は人か物か?
The plan will —— a cost but generate a profit in the long term.
(その計画はコストがかりますが、長期的には利益を生むでしょう。)
(A) burden (B) impose
空所に入る語として適切なのは、(A)と(B)どちらでしょうか?
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答えは(B) imposeです。辞典を引くと、imposeは「(義務・罰・税などを)負わせる、課す、(意見などを)押しつける」、動詞のburdenは「(重荷となるものを)負わせる、負担させる、(…で)悩ます、苦しめる、(荷を)負わせる」といった意味が載っています。これらだけを見ると、burdenでも、imposeでも、どちらでもよいような気もします。
ところが、ポイントは両者の用法の違いにあります。動詞のburdenは目的語に人や動物を取ります。辞典から用例を引きます。
burden a horse with a heavy load(馬に重荷を負わせる)(『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)
また、burdenはしばしば受け身で用いられます。
I was burdened with debt. (私は借金を背負っていた。)
能動態が受動態に変わる際、能動態の目的語が主語の位置に来ます。上の例文で主語は Iですので、能動態のburdenは目的語に人や動物を取る、ということがやはり確認できます。
一方、imposeは目的語に人や動物以外のものを取ります。こちらも辞典から用例を引いてみます。
Citizenship imposes certain obligations on you. (市民であればいくらかの義務が課せられる。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)
こうした用法の違いがあるため、冒頭の空所にはimposeが入ることになります。上の例文のように、「impose+義務・罰・税・意見など+on人や物」と、前置詞onが用いられることも覚えておきましょう。
以上、動詞のburdenとimposeの用法の違いについて見てきました。同様の注意が必要なものに、例えば他動詞のdiscuss(例:“I discussed the problem with him.”)とlecture(例:“I lectured him on the problem.”)があります。
circle, roll, spinの区別
『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM,2022年)の「TEST4 PART5」108(p. 110)に、日本語でいうと次のような意味の文章が出てきます。
今年、収穫パレード(harvest parade)は広場をスタート・ゴールにして村を一周します。
出題されている英文は次のとおりです。
This year the harvest parade will —— the village, beginning and ending at the town square.
選択肢の中にはcircleやroll, spinといった単語が並んでいます。言われてみれば、どれも「回る」っぽい意味のような気がしますが、正解はどれでしょう・・・?
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正解はcircleです。rollには自動詞の用法も他動詞の用法も両方あります。この場合は後ろに前置詞がないので、the villageを目的語とする他動詞の用法と解さねばなりません(←考えてみれば基本的なことですが、自動詞か他動詞かを見分ける際のポイントです)。他動詞のrollは「(ボールなどを)転がす」という意味になります。
例:He rolls a barrel. (彼はたるを転がしている。)
spinも同様です。spinにも自動詞、他動詞、両方あり得ます。他動詞のspinは「(…を)回す、回転させる」という意味です。
例:She spins a coin. (彼女はコインを指ではじいて回す。)
一方、circleは、他動詞で「(…の)まわりを回る、旋回する」という意味があります。上の問題は、「村を転がす」「村を回転させる」では明らかにおかしいので、circleが正解(circle the villageで「村を一周する」)ということになります。目的語の方を動かすのか(この場合、転がしたり回したりするのか)、それとも、目的語ではなく主語の方が動くのか(この場合、目的語「村」の周りを主語「パレード」が回る)を見分ける、のようなイメージです。
一見、似たような意味の単語の中から、正確な英文を作るために適切なものを選ばねばならないという問題です。TOEICでは難問の部類だと思います。一つ一つ覚えて、自分の引き出しを増やしていくしかないかな、といったところです。
searchの目的語
We are —— a solution.(解決策を探しています。)
(A) seeking (B) searching
空所に入る語として適切なのは、(A)と(B)どちらでしょうか?
答えは(A) seekingです。(B) searchingの場合、前置詞forを伴って
We are searching for a solution.
ならばOKです。つまりこのケースでは、
(A) seekは他動詞、(B) searchは自動詞です。
ところで、注意したい点に、以下があります。
- searchには他動詞としての用法もあること
- searchを他動詞として用いる場合の目的語
次の例文を見てください。
He searched his pocket for money.(ポケットの中をお金がないか彼は探した。)
この例文のように、searchには他動詞としての用法もあります。では、本節の冒頭の問題は(B)でも正解でしょうか?
答えはNoです。もう一度、例文を見てください。
He searched his pocket for money.
目的語になっているのは「探したもの」ではなく「探した場所」です。この点がポイントです。
search a house(家の中を捜す、家宅捜索する)、 search the database(データベースを検索する)のように、searchの目的語は「探す場所」です。「探すもの」はforの後に置きます。
以上、「burden, impose」「circle, roll, spin」「search」を例に取って、「どういうものが目的語になるのか?を問う、TOEICでは難問の部類」を整理してきました。
以上見てきたような問題への対策としては、こまめに辞典を引いて語彙力を強化することに加えて、「暗唱できるまで例文を覚える」ことをおススメします。単語だけ覚えようとすると、どうしても混乱しがちです。それよりも、本エントリーで記載したような例文ごと、暗唱できるようになるまで何回も口に出して覚えると、類題が出たときにとっさに対応できます。