TOEIC990点満点を取れるかは運次第?class on(…についての講習)か、class by(…を用いた講習)か?

今回は、TOEICの過去問で見かけた難問?を取り上げたいと思います。

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST4 PART5」102(p. 110)に、次の問題が出てきます。

Classes —— using the new employee scheduling software will begin in December.

選択肢は(A) at, (B) to, (C) by, (D) onです。さて正解はどれでしょう…?

正解は(D) onです。onには「…について、…に関する」という用法があります(aboutより学問的、専門的な内容のものに用います)。英国の有名な哲学者ジョン・スチュアート・ミルの著書に『自由論』がありますが、原題はOn Libertyです(※)。上の英文は、「従業員用の新たなスケジュール管理ソフトに関する講習は12月に始まります」という意味になります。

(※)ちなみに、学術論文で出典を示す際など、書名はこのようにイタリック体にするのが一般的です。

これだけなら、知っている人も多いですし、「「…に関する講習」で正答はonね、よしよし、次の問題に行ってみよう」となりそうなものです。が、当サイト管理人としては、(C) byが気になります。Classes by using…(従業員用の新たなスケジュール管理ソフトを用いた講習は12月に始まります)も正答になるんじゃないの?という気がしてきます。

英辞郎on the WEB Proをclass onで検索すると1349件のヒット数があり(以下、検索結果はいずれも本エントリー執筆時点)、

teach a class on(…に関する講義をする)

などが結果に表示されます。一方class byで検索してみると、

Further, the school has also created opportunities so students can think more intentionally about their future occupation … through the class by using a booklet…. (また、小冊子を活用した授業を通じ、職業について生徒が考える機会を本校は設けています。強調、当サイト管理人)

などが含まれています。検索のヒット数はclass byよりclass onの方が多く、しかも、class byの場合は

The professor started the class by calling on the student. (教授は、授業の最初にその学生を指名しました。)

上の例文のように、classとbyが隣接していても、実のところは、述語動詞(上の場合はstarted)とbyがつながっているものが目立ちます。どうやら、コロケーション(単語と単語のつながり方)としてはclass byよりclass onの方が自然であり、冒頭で取り上げた設問もそちらを答えさせたいのだろうな、と想像できます。

ですが、上のthrough the class by using a booklet … (小冊子を活用した授業を通じ…強調、当サイト管理人)のような英文も現にある以上、冒頭の設問も、byでも正答になっちゃうのでは…??とも感じてしまいます。

もし、TOEICで990点満点を狙う場合、リーディングは1問も落とせないと考えるのが良いです(フォームによっては、1~2問ミスくらいでも満点が出る場合があるようです。フォームの難易度によります)。そのため、英語力が上級の人が冒頭の設問に実際に出くわして、onか?byか?迷った場合、英語力があるがためにかえって、正答できるか、満点を取れるかどうかは運次第になるのでは?と感じた次第です。

5文型に例外はあるか?およびSVO to do

このエントリーでは、「5文型に例外はあるか?」という点と、「SVO to doの形を取る動詞」について述べたいと思います。

5文型に例外はあるか?

高校英語でいわゆる5文型を習うわけですが、すべての英文は5文型のいずれかに分類できるでしょうか?

この点について、以下のように、各文法書は意見が分かれています。すべての英文は5文型のどれかに分類できると述べているものもあります。

どんな複雑な英文でも、次の5つの文型にまとめることができる。(『総解英文法』美誠社,1970年,p.15)

一方で、例外を認める余地を残しているものもあります。『新マスター英文法』(聖文新社,2008年)は「たとえどんなに多くの修飾語句の付いた複雑な文でも、ふつう、この五つの基本文型のいずれかに属する」(p.15.強調、当サイト管理人)としています。

『英文法総覧』(改訂版,開拓社,1996年)は「多くの文は、5文型に還元することができ」る(p.17.強調、当サイト管理人)としつつも,「すべての文が過不足なく五つの文型のどれかに分類できるわけではな」いと論じています(p.16.同上)。

『英文法解説』(改訂3版,金子書房,1991年.同上)は「英語の文がたった5つの文型で処理できるはずはないが、基本的な構文の説明には5文型が便利である」と説明しています。

『現代英文法講義』(開拓社,2005年)に至っては「従来の5文型を再検討し、(中略)8文型を提案」しています(p.15.同上)。

SVO to doの形を取る動詞

さて、動詞には、SVO to doの形を取るものがあるので覚えておきたいところです。SVO to doについては、第5文型に含めている文法書もあれば、「一般に〈S+V+O+to do〉の形は、むりに基本5文型に分類せずにこのままの型として理解したほうがよい」としているものもあります(『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.46.強調、当サイト管理人.同旨、『英文法解説』改訂3版,金子書房,1991年,p.331)。

以下では、実際の例文を複数示しておきたいと思います。SVO to doについては(それ以外の事項もですが)、複数の例文を何回も暗唱・暗記して頭に叩き込んでおくのがTOEIC対策としては有用だと考えます。

The management team want all the employees to be punctual. (経営陣は社員がみな時間を厳守することを望む。(『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.46)

意味上、all the employees to be punctual全体がwantの目的語になっているとも考えられますが、all the employeesがwantの目的語(O)、to be punctualが目的格補語(C)だと見ることもできます。この旨の解説に続けて、『ロイヤル英文法上』は上のとおり,SVO to doは、無理に基本5文型に分類せずにこのままの型として理解した方が良いと述べています。

SVO to doの形を取る主な動詞の例を挙げておきますので、何度も暗唱・暗記して頭に叩き込むといいです

He told me not to eat too fast. (彼は私にあまり早食いするなと言った。 “He said to me, “Don’t eat too fast.”と書き換え可能。参考:君はsay, speak, talk, tellの違いを説明できるか?

I asked him to help Taro. (私は彼に太郎を手伝ってくれと頼んだ。)

※なお、askにはさまざまな用例がありますが、次の語法も大学受験英語などで見かけます。

The policeman asked me some questions.

→I was asked some questions(by the policeman).

またはSome questions were asked of me(by the policeman).

すなわち,askを用いた第4文型SVO₁O₂を受動態にする場合、目的語O₁(この場合はme)を主語にするときと、および目的語O₂(この場合はsome questions)を主語にするときとで、それぞれ上の書き方になります。O₂を主語にする際は上のようにO₁の前にofが必要です。

話をSVO to doに戻します。

I expect you to succeed. (私はあなたが成功するものと期待している。)

He didn’t allow her to go out. (彼は彼女が外出するのを許さなかった。)

His help enabled me to do the job sooner. (彼の助けのおかげで仕事が早く終わった。)

He encouraged me to take the exam. (彼はその試験を受けるよう私を励ましてくれた。)

I got my friends to help me.  (友達に助けてもらった。)

getには、SVO to doだけでなく、SVO過去分詞(「(…を)~させる、してもらう」「(自分で)(…を)~してしまう」「(…を)(~された状態に)する」やSVO doing(「(…を)~させる」)などの用法もあり、注意が必要です。このエントリーでは、SVO to doに話を絞ります。getをSVO to doの形で使う場合は、例えば、

I —— my friends to help me.

上の文にはmade, had, let, gotのどれが入るか選べ、のような問題で出がちです。前3者はどれもto doでなく原形(例えば“I made my friends help me.”など)を取るのでこの場合gotが正解です。

話をまたもやSVO to doに戻します。

I wish you to come home with me. (君に家に一緒に来てほしい。)

I know him to be a nice guy. (私は彼がいい人だと知っている。)

なお、以下のbelieveやconsiderのように、to beが省略可能な動詞もあります。一方、上の“I know him to be a nice guy.”のようなknowの用例の場合、to beは省略しません。この辺りは一つ一つ覚えていくしかないところかもしれません。

I believe him [to be]innocent. (私は彼が無罪だと信じている。)

I consider him [to be ]a great poet. (私は彼を大詩人と見なしている。)

TOEICの難問?circle, roll, spinの区別

今回は、TOEICの過去問で見かけた難問?を取り上げたいと思います。

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST4 PART5」108(p. 110)に、日本語でいうと次のような意味の文章が出てきます。

今年、収穫パレード(harvest parade)は広場をスタート・ゴールにして村を一周します。

出題されている英文は次のとおりです。

This year the harvest parade will —— the village, beginning and ending at the town square.

選択肢の中にはcircleやroll,spinといった単語が並んでいます。言われてみれば、どれも「回る」っぽい意味のような気がしますが、正解はどれでしょう・・・?

正解はcircleです。rollには自動詞の用法も他動詞の用法も両方あります。この場合は後ろに前置詞がないので、the villageを目的語とする他動詞の用法と解さねばなりません(←考えてみれば基本的なことですが、自動詞か他動詞かを見分ける際のポイントです)他動詞のrollは「(ボールなどを)転がす」という意味になります。

例:He rolls a barrel. (彼はたるを転がしている。)

spinも同様です。spinにも自動詞、他動詞、両方ありえます。他動詞のspinは「(…を)回す、回転させる」という意味です。

例:She spins a coin. (彼女はコインを指ではじいて回す。)

一方、circleは、他動詞で「(~の)まわりを回る、旋回する」という意味があります。上の問題は、「村を転がす」「村を回転させる」では明らかにおかしいので、circleが正解(circle the villageで「村を一周する」)ということになります。目的語の方を動かすのか(この場合、転がしたり回したりするのか)、それとも、目的語ではなく主語の方が動くのか(この場合、目的語「村」の周りを主語「パレード」が回る)を見分ける、のようなイメージです。

一見、似たような意味の単語の中から、正確な英文をつくるために適切なものを選ばねばならないという問題です。TOEICでは難問の部類だと思います。一つ一つ覚えて、自分の引き出しを増やしていくしかないかな、といったところです。

TOEICのひっかけ?teachの指す範囲

今回は、TOEICの過去問で見かけたひっかけ?を取り上げたいと思います。

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART7」168-171(p. 95)に、次のような意味の文章が出てきます。

Carmen博士は工学部に19年間在職しました。彼は専任教授として高等数学などを10年間教えました(He served as a full-time professor for ten years, teaching advanced mathematics…)。その後、学部長に選任され、残り9年間をその役職で任に当たりました。学部長に在任中、カリキュラムを再編するためのチームを率いました。

上のような意味の文章が登場した後、「Carmen博士は工学部で何年間教えたでしょうか(How long did Dr. Carmen teach…)?」という問題が出題されます。選択肢は(A) 6年、(B) 9年、(C) 10年、(D) 19年です。さて正解はどれでしょう?

模範解答では、正解は(C) 10年とされています。模範解答に書いてあるので、そうなのでしょうが、「大学の学部長や、一般に学校の校長なども、管理職という役割を通じて教員の一人として学校や児童生徒、学生に貢献している。そう考えると、管理職も「先生」であり、広い意味で「教えている」とは言えないかな…」とも思えてきます(少なくとも当サイト管理人にはそう思えてきました)。よって(C) 10年はひっかけで、正解は(D) 19年なんじゃないかな?と最初は思ったのですが、話は逆で、(D) 19年がひっかけ?で(または、TOEICの作問者としては特段ひっかけのつもりもないかもしれません)、正解は(C) 10年とされています。

日本および韓国で販売されている公式問題集や過去問題集について丹念に調べていくと、ごくまれに、模範解答が間違っているというコメントがネット書店のカスタマーレビューに書かれています。が、上の問題に関しては、「(C) 10年が正解」はおそらく正しいです。経験上、TOEICは「ひっかけであること自体が非常に分かりづらいひっかけ」のような問題は出してきません。上記も、「彼は専任教授として高等数学などを10年間教えました(He served as a full-time professor for ten years, teaching advanced mathematics…)」と書いてある以上、「この場合、teachは10年」が正解なのでしょう。

「残り、余り、やり残し、(口座や負債の)残高」の意味のbalanceと、一緒に覚えておきたいremainder

TOEICにたまに出てくる(かつ、大学入試ではほぼお目にかからない)英語に「残り、余り、やり残し、(口座や負債の)残高」の意味のbalanceがあります。通常、balanceと聞けば「平衡、均衡、調和」(要するにカタカナの「バランス」)の意味が思い浮かぶと思います。TOEICを受験する際は要注意です。いくつかの辞典の例を以下に挙げます。

In the balance of class time she answered our questions. (授業時間の終わりに彼女は私たちの質問に答えた。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

The balance in my bank account is 100,000 yen. (私の銀行口座の残高は10万円です。『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

“Don’t you owe a balance?” (「借金は残りませんでしたか?」英辞郎on the WEB Pro

なお,「残り(のもの、人々)、残余(rest)」を表す語remainderもTOEICで見かけますので一緒に覚えましょう。例えば次のような英文がありえます。

Fifty percent of the total cost is required now, and the remainder is due upon completion. (総額のうち50%はいま求められており、残りはプロジェクトが完了次第支払われる必要があります。)

上の英文は、『公式TOEIC Listening & Reading 問題集7』(国際ビジネスコミュニケーション協会, 2020年)の「TEST2 PART5」122(p. 85)を一部改変したものです。この問題は実は難問で、remainderの位置が空欄になっているのですが、remainder(正解)のほかの選択肢にはremainsやremainなどがあります。TOEICに慣れていないとremainderはなじみが薄いかもしれず,remain(残り,残り物)を選ぶ人も多いかもしれません。ところが「残り,残り物」(そのほか残骸,化石などの意味もあります)の意味のremainは複数形で使われます。上の英文は、be動詞isが用いられているため、その主語が複数形になるのは変です(つまり、複数形remainsを用いたくなるかもしれせんが、その後にbe動詞isが続くのは変なので、上の英文ではできません)。そのためremainもremainsも正解にはならず,remainderが入ります。

上記の、『公式TOEIC Listening & Reading 問題集7』(国際ビジネスコミュニケーション協会, 2020年)の「TEST2 PART5」122(p. 85)を初めて見たとき、「remain/remains/remainderを見分けられるか(使い分けられるか)を問うのか…ずいぶん難問だなあ」と思いました。そのとおりかもしれませんし、実はもっと単純に、remainderという単語をTOEICは使わせたがっているのかもしれません(当サイト管理人の、根拠のない憶測です)。

いずれにせよ、「残り、余り、やり残し、(口座や負債の)残高」の意味のbalanceと、「残り(のもの、人々)、残余(rest)」を表す語remainderはTOEICで見かけますので、覚えておくと良いでしょう。

would ratherって覚えてますか?

would ratherという表現があります。大学受験英語にも出てきますが、割と難易度が高めだ(英語以外の科目も勉強しなきゃならないし、would ratherを覚え切るくらい英語をやり込む受験生は多くない)と思います。TOEICでも見かけますので、本エントリーで解説したいと思います。

would rather(またはhad rather)+原形不定詞(※)の基本的な意味は「むしろ~したい」です。ポイントを以下に整理したいと思います。

原形不定詞とは、動詞の原形をそのまま用いるものです(要するに動詞の原形です)。

1.基本的な例

“How about a coffee?” “I’d rather have a cup of tea.” (「コーヒーはいかがですか?」「むしろ紅茶が欲しいな。」)

※上の例文のように、wouldはI’d、he’dのように短縮されることが多いです。ですが次のように、短縮されない例もあります。

I would rather quit than change my club. (部活を替えるくらいならむしろ辞めたい。)

過去の「~したかった」はwould rather have+過去分詞で表しますが、あまり用いられないとされます(『ロイヤル英文法』改訂新版,旺文社,2000年,p.506-507)。

2.疑問文はWould you rather~?否定形はwould rather not~の形を取ります。なお、話が広がってしまいますが,had better notneed not(※),ought not toなど、notの位置を問う問題は英語の試験全般でよく見かけます

(※)need notは助動詞としてのneedの場合。

例:You need not speak loud.

本動詞としてのneedの場合、以下の例のような形になります。

例:You don’t need to speak loud.

3.冒頭に述べたとおり、wouldの代わりにhadが来ることがあります。さらに、ratherの代わりにsoonerが来るなど、いろいろな変形があります。以下の形はみな「(…するくらいなら)むしろ~したい」という、同じ意味を表します。

would rather ~ (than …)
would sooner ~ (than …)

had rather ~ (than …)
had sooner ~ (than …)

would as soon ~(as …)
had as soon ~(as …)

例:I had sooner stay at home than go there. (そこへ行くくらいなら家にいた方がましだ。)

4.would ratherの後に、原形不定詞でなく節が来ることがあります。この場合、①節内の動詞は過去形になる②thatは省略するのが普通です。

例:I’d rather you told me frankly what you think. (思っていることを率直に言ってほしい。)

groceriesには食料が含まれ、grocery storeでは食料品が売っている

唐突なタイトルになってしまいました(超古典的ですが「バナナはおやつに入りますか」的な)。

groceries(食料雑貨類)、grocery store(食料雑貨店)はTOEICでは頻出です。これらの存在を知ってはいても、うろ覚えだと、「あれ、grocery storeって雑貨屋のことだっけ…?grocery storeに食料って売っている?「雑貨」屋なので食料は売っていない…?」となってしまい、正確に覚えていれば落とさないはずの問題でミスをしてしまいます。

当サイト管理人は実際、食料の付近に人物が立っている光景を指して「彼はgroceriesを見ています」「彼女はgrocery storeにいます」のような選択肢を設ける問題に出くわしたことがあります。ほかにも紛らわしい選択肢があり、「意味的に、groceriesには雑貨だけでなく食料が含まれる。grocery storeは雑貨だけでなく食料品も売る」ことを知らないと間違えてしまいますので注意が必要です。

“I hope that all is well.” や “I hope that all are well.”など

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART6」139-142(p. 85)に“I hope that all are well.”という表現が出てきます。

wellには副詞や形容詞などの用法があり、各辞典には例えば次のような用例が載っています。

(副詞の用例)

Everything is going well with me. (すべてうまくいっています。『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

(形容詞の用例)

Things are well enough. (情勢はまずまずのところだ。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

All is not well. (すべてがうまくいっているわけではない。『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

All [Everything] is well with us. (私たちは万事がうまくいっている。(同上))

All’s well that ends well. (終わりよければすべてよし。(ことわざ。2つめのwellは副詞。Shakespeareの戯曲の題名にもなっている)(同上))

英辞郎on the WEB Proでは、レターやEメールの冒頭の文に使われるという趣旨のラベルを付与したうえで、次の例文を掲載しています。

I hope all is well with you. (全て順調であることを願います。◆「いつもお世話になっております」の代わりに使える 英辞郎on the WEB Pro

ということで、次の表現は決まり文句的に覚えてしまうと良いと思われます。

I hope all are well. (半角のクォーテーションマーク(二重引用符) 「 “” 」でキーワードを囲んでGoogle検索をすると、本エントリー作成時点で7万4100件ヒット)

I hope that all are well. (同じ条件で58万1000件ヒット)

I hope all is well. (同じ条件で108万件ヒット)

I hope that all is well. (同じ条件で101万件ヒット)

I hope you are well. (同じ条件で932万件ヒット)

I hope you are doing well. (同じ条件で325万件ヒット)

ところで、上に紹介した『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART6」139(p. 85)は、少しやっかいな設問です。冒頭が空欄になっており、正解は“I hope that all are well.”です。これだけなら上記の事項を覚えていれば解けるのですが、選択肢の中に“Thanks for the generous contribution.”(惜しみない貢献をありがとうございます。)という一文が紛れています。この表現も、レターやEメールの冒頭の決まり文句としてもOKであるように思えてしまいます(「いつもお世話になり、ありがとうございます」的な決まり文句に見えてしまいます)。

“Thanks for the generous contribution”とグーグル検索すると4万6500件ヒットするので、不自然な英語ではなさそうです。不正確な英語がネット上に拡散することはありうるので、目安にすぎませんが、「 “” 」でキーワードを囲んでGoogle検索をした際のヒット数があまりに少ない場合、不自然/不正確な英語の可能性が高いです

ですが、検索結果の内容をよく見ると、レターやEメールの冒頭の決まり文句というよりは、具体的に何かをしてもらった際の御礼の言葉だろうと推測できます。そのため“Thanks for the generous contribution.”ではなく“I hope that all are well.”になる、という構成になっています。高得点を狙う場合は注意したい設問です。

「ごくわずかの、(可能性などが)ありそうにない」という意味のremote

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM, 2022年)の「TEST3 PART6」135-138(p. 84)にa remote possibilityという表現が登場します。remoteには「(距離的に)遠い、人里離れた」、「(時間的に)遠い、ずっと以前の」などの意味があります。カタカナの「リモート」も、コロナ禍以降特に、働き方や会議の仕方などを指す言葉として定着した感があります。

remoteにはさらに「ごくわずかの、(可能性などが)ありそうにない」という意味があり、a remote possibilityで「わずかの可能性、万が一のこと」を表します。a bare possibilityやa low possibilityも同義です。

「TOEICに出たことがあるか、または出そうか」を基準にエントリーを書くのが当サイトの方針なので、以下は話が広がってしまいますが(覚えて損はないものの、以下のすべてがTOEICに出るかは分かりませんが)、形容詞とpossibilityの組み合わせには,ほかにも例えば以下のような例があります。

a distinct possibility(はっきりとした可能性)

a faint possibility(わずかな可能性)

a good possibility(「公算が大きい」「可能性が高い」。以下のa high possibility,  a strong possibilityも同様)

a high possibility

a strong possibility

a person of great possibilities(大いに将来性のある人)

One clear possibility is that…. 一つはっきりとありそうなことは…です。

君はsay, speak, talk, tellの違いを説明できるか?

say, speak, talk, tellの違いを説明できますかと聞かれたら、あなたはできますか?

優れた辞典として定評のある『ジーニアス英和辞典』(大修館書店,第5版,2014年)は次のように解説しています。

sayは伝えるべき内容を必要とし、「言葉を発する」の意。

tellは伝えるべき内容だけでなく話し相手も必要で、「人に情報を伝える」の意。

speakは話し相手がいるかどうかに関係なく「言葉になるように音を出す」の意。

talkは話し相手が必要で「言葉を通じてコミュニケーションを取る」ことを表す。

こうした解説は興味深いですし、さらに、各辞典や文法書を比較してみると面白い発見があるかもしれません。

が、各種の英語資格試験などでsay, speak, talk, tellの違いを問う場合、どういう問題が出るかはおおよそ相場が決まっています。例えば次のような問題です。空所に入る語として適切なのはどれでしょう?

He —— me good night. (彼は私にお休みを言った。)

(A) said (B) spoke (C) talked (D) told

正解は(D) toldです。tellは第4文型SVO₁O₂をつくることができます。その際、「…に」に当たる最初の目的語O₁に人を、後続の目的語O₂に事柄を取り、「人に…を話す」という文を成立させることができます(※)。

※なお、ややこしいですが、この最初の目的語O₁が間接目的語。後続の目的語O₂が直接目的語です。

そのほかの選択肢say, speak, talkはいずれも、基本的に、人を目的語に取りません。例えば、He said me good night. とはいわず、He said good night to me. と表現します。同様に、say, speak, talkに関しては次のような例文が正しいです。

He said good night.

He said, “Are you tired?”

He said to me, “Are you tired?”

“Hello! May I speak to Nancy?” (電話で)「もしもし、ナンシーさんはいらっしゃいますか」

She speaks English fluently.

Who are you to talk to me like that? (そんな口の利き方をするなんて何様なの?:決まり文句。大学受験参考書でよく見かける印象があります)

人を目的語に取るのはtell. say, speak, talkはtoが必要」「tell人,say to人, speak to人,talk to人」「tell人。ほかはto 人」と、何回も暗唱して覚えましょう。多少無理やり?かもしれませんが「アルファベット順に4つを並べたとき、人を目的語に取るのは最後の4つ目のtell」と覚えても良いかもしれません。…改めてこう書いてみると無理やりな覚え方かもなあとも感じますが、ともかく覚えることが資格試験の合格や、英語を使いこなせるようになることのきっかけ、とも言えますので、なりふり構っていられないようにも思います。

なお、「say, speak, talkはいずれも、基本的に、人を目的語に取りません」と上に書きました。ところが例外(のように見える事項)もあり、

I talked my father into buying me a camera.

父を説得してカメラを買ってもらった。(=I persuaded my father to buy me a camera. 『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

上のような形で人を目的語に取る場合もあります。talkを辞典で引くといくつか載っていますので、興味があれば覚えておきましょう。

また、

He said he’ll be back tomorrow. (彼は明日帰ってくると言った。)

上の例文では、saidとheの間のthatが省略されています。その結果上の文になるわけで(上の文に問題はないわけで)、sayの次に人は来ないとは言えません。あくまで、sayは人を目的語に取らない、と言えるのみです。

2023.09.06追記:このエントリーでは、上記のように、各種の英語資格試験などでsay, speak, talk, tellの違いを問う場合、どういう問題が出るかはおおよそ相場が決まっている、との前提の下、それらに話を絞りました。

このエントリーの話題に関連して、定番の文法書『ロイヤル英文法』(改訂新版,旺文社,2000年,p.395)は次のとおり述べ、例文も複数挙げています。

間接話法などで使われる伝達動詞は一般に他動詞であるが、〈目的語+目的語[節]〉のように2つの目的語をとるのは ask、tell など少数の動詞で、ほかは say to me that … のように to などの前置詞が必要である。

確かにaskも、最初の目的語O₁に人を、後続の目的語O₂に事柄を取り、「人に…を尋ねる、聞く」という文を成立させることができます。

I asked him whether he knows her. (彼女を知っているかどうか、私は彼に尋ねた。)

I asked him his name. (私は彼に名前を尋ねた。)