toの後ろは原形か?動名詞か?

He is willing to —— me. (私を助けることを彼はいとわない。)
(A) help  (B) helping

空所に入る語として適切なのは、(A)と(B)どちらでしょうか?

答えは (B) helpです。be willing to doで「…するのをいとわない」、「…してもかまわない」という意味です。be willing to doingではありません。

問題をもうひとつ。
I’m looking forward to —— you again. (あなたにまた会えることを楽しみにしています。)
(A) see  (B) seeing

空所に入る語として適切なのは、(A)と(B)どちらでしょうか?

答えは (B) seeingです。look forward to doingで「…を楽しみにして待つ、期待する」という意味です。この場合、toの後に動詞の原形が来てbe looking forward to doではありません。

それでは、次の問題では、空所に入る語として適切なのは(A)と(B)どちらでしょうか?

He’ll be pleased to —— Nancy. (彼はナンシーのことを喜んで手伝うだろう。)
(A) help  (B) helping

答えは (A) helpです。be pleased to doで「喜んで…する」という意味になります。即答できる方もいると思いますが、上のbe willing to doやbe looking forward to doingと比べると悩む方も多いかと思います。

そもそも、be動詞+形容詞+toや動詞+副詞+toの後ろには原形が来るか?それとも動名詞が来るか?を素早く判断するための公式のようなものはあるでしょうか?

筆者じしん勉強中ですが、今のところ解法のテクニックとして、次のように考えています。

1. 基本的に、原形が来ることが多い。

2. 動名詞が来る場合、パターンは決まっている。代表例は以下のとおり(以下、動名詞でなく(代)名詞が来る場合もある)。

look forward to doing(…を楽しみにして待つ,期待する)

be used to doing(…に慣れている。become used to doing, get used to doingなどの形もある)

※used to 原形は「よく…したものだ、以前は…であった」。

be accustomed to doing(…に慣れている。become accustomed to doing, get accustomed to doingの形もある)

dedicated O to doing(…専念する、打ち込む)

以上、どれも見逃せませんが、最後に挙げたdedicated to O doingもTOEICで狙われる可能性があるので要チェックです。

He dedicated his life to helping orphans. (彼は孤児を助けることに一生をささげた。)

She dedicated herself to teaching English. (彼女は英語教育に身をささげた。)

参考:to不定詞か、動名詞ingか、どちらが来るかの見極め 以上考察してきたことは、be動詞+形容詞+toや動詞+副詞+toの後ろには原形が来るか、それとも動名詞が来るかを素早く判断するためには?です。一方、左記のエントリーでは、タイトルのとおり、「ある動詞に続くのがto不定詞か、それとも動名詞ingか」の原則を整理するなどしています。

自動詞/他動詞の知識と基本的な語彙力で即答する!:『公式TOEIC Listening & Reading 問題集5』の良問

『公式TOEIC Listening & Reading 問題集5』(国際ビジネスコミュニケーション協会,2019年)でとても参考になる良問を見つけました。「TEST1 PART5」の118(p.43)です。分かりやすくなるよう、選択肢を少しだけ改変したうえで、解説してみたいと思います。

次の英文の空所に入る語として適切なものを選びなさいとして、選択肢が4つ提示されているとします(実際は、上の118では、選択肢(A)がenlargeです。以下の解説の大勢に影響はありません)。

The intersection of Wallace Avenue and Third Street will —— open to pedestrian traffic during construction.

(A) encourage
(B) secure
(C) transform
(D) remain

この問題を解く鍵になるのは自動詞/他動詞の知識と基本的な語彙力です。

  • (A) encourageは「…を元気づける、励ます、促進する」
  • (B) secureは「…を確保する、安全にする」(secureには形容詞(安全な、安定した)の用法もありますが、助動詞willの直後であるなどのため、空欄には動詞が入ると考えねばなりません)
  • (C) transformは「…を変形させる」
  • (D) remainは「…のままである、残る」(remainには名詞の用法もありますが、(B) secureと同様、この場合は動詞だと考えねばなりません)

という意味の、いずれも動詞です。

(A)~(C)の3つは目的語を取る他動詞です。簡単に説明すれば、例えば以下の例文1のように、「…を」を必要とする動詞が他動詞だと覚えれば良いです。

1. He encouraged me to try again.(彼はもう一度挑戦するよう私を励ました。)→encourageは他動詞、meが目的語です。

ただし、動詞と「…を」のような意味を表す語が一緒に用いられている、イコール常に動詞と目的語、とは限りません。例えば次の例文2をご覧ください。

2. You should not run in the hall.(廊下を走るべきではありません。)→日本語で考えた場合「廊下を」でも、runはこの場合自動詞、in the hallは動詞runを修飾する副詞句です。

例文1でmeをカットし、“He encouraged to try again.”のようにした場合、彼が誰を励ましたのかが不明で(さらに言えば、もう一度挑戦するのが誰なのかも不明で)、文が成立しません。一方、例文2でin the hallをカットし、“You should not run.”としても、意味は変わってしまいますが、文としては成立します(※)。また、例文2は「廊下で走るべきではありません」とも訳せます。以上の違いがあります。

※ただし、副詞的修飾語句の中には次の例文3のin Tokyoのように、カットすると文が不自然になったり、意味をなさなくなるものもあります。削除することのできない副詞的語句を、修飾語句(Modifier)と区別して、付加語(Adjunct)と呼ぶことが多いです。

3. He lives in Tokyo.(彼は東京に住んでいます。)

選択肢のうち、(D)だけが目的語を取らない自動詞です。(A)~(C)(他動詞)と(D)(自動詞)の区別さえできれば本問は解けたようなものです。(D)をまず除外して(A)~(C)のどれかから選ぶと考えた場合、動詞の直後のopenが目的語(名詞、代名詞、名詞相当語句)になりそうです。確かに、openには名詞の用法もありますが(「空地、 樹木のない地」などの意味を表します)、それだと文の意味が不明になります。他動詞(A)~(C)でなく、自動詞(D)を入れると意味が明らかになります(「Wallace大通りと三番街の交差点は、工事期間中、歩行者に開放されたままになります」)。

各選択肢や、例えばintersection(交差点)、pedestrian(歩行者。pedestrian trafficは、直訳すれば「歩行者の通行、歩行者の往来」ですが、これら2語をひとまとめにして「歩行者」と訳しても良いと考えます)、construction(建設、工事)などの問題文中の単語の意味を知っていることも確実な正答には欠かせません。語彙力が中途半端だと、「construction(建設、工事)と問題文に書いてあるから、何となく、(B) secure(…を確保する、安全にする)や(C) transform(…を変形させる)かな?」と思ってしまうかもしれません。

まとめると、冒頭に書いたとおり自動詞/他動詞の知識と基本的な語彙力が鍵だといえます。本問を好例にして、似たパターンの問題も即答できるようにしたいところです。

他動詞の目的語の基本と応用:「burden, impose」「circle, roll, spin」「search」を例に考える

「自動詞と他動詞」や「目的語」は基本事項と見なされていると思いますが、TOEICで点数を取ろうとする場合、なめてかかれないポイントです。このエントリーでは、いくつかの単語を例に取り、この点を掘り下げてみたいと思います。

はじめに

簡単にいえば、例えば以下の1のように、「…を」を必要とする動詞が他動詞、必要としない動詞が自動詞だと覚えればよいです。

1. He encouraged me to try again.(彼はもう一度挑戦するよう私を励ました。encourageは他動詞、meが目的語

ただし、「…を」のような意味を表す語が一緒に用いられている、イコール常に他動詞と目的語、とは限りません。例えば次の2をご覧ください。

2. You should not run in the hall.(廊下を走るべきではありません。)→日本語で考えた場合「廊下を」でも、runはこの場合自動詞、in the hallは動詞runを修飾する副詞句です。

例文1でmeをカットし、“He encouraged to try again.”のようにした場合、彼が誰を励ましたのかが不明で(さらに言えば、もう一度挑戦するのが誰なのかも不明で)、文が成立しません。一方、例文2でin the hallをカットし、“You should not run.”としても、意味は変わってしまいますが、文としては成立します。以上の違いがあります。

手短ですが、このあたりが「自動詞と他動詞」や「目的語」の超・まとめです(参考:自動詞/他動詞の知識と基本的な語彙力で即答する!:『公式TOEIC Listening & Reading 問題集5』の良問)。次に応用例を見ていきます。

burdenとimpose:目的語は人か物か?

The plan will —— a cost but generate a profit in the long term.
(その計画はコストがかりますが、長期的には利益を生むでしょう。)
(A) burden  (B) impose

空所に入る語として適切なのは、(A)と(B)どちらでしょうか?


答えは(B) imposeです。辞典を引くと、imposeは「(義務・罰・税などを)負わせる、課す、(意見などを)押しつける」、動詞のburdenは「(重荷となるものを)負わせる、負担させる、(…で)悩ます、苦しめる、(荷を)負わせる」といった意味が載っています。これらだけを見ると、burdenでも、imposeでも、どちらでもよいような気もします。

ところが、ポイントは両者の用法の違いにあります。動詞のburdenは目的語に人や動物を取ります。辞典から用例を引きます。

burden a horse with a heavy load(馬に重荷を負わせる)(『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

また、burdenはしばしば受け身で用いられます。

I was burdened with debt. (私は借金を背負っていた。)

能動態が受動態に変わる際、能動態の目的語が主語の位置に来ます。上の例文で主語は Iですので、能動態のburdenは目的語に人や動物を取る、ということがやはり確認できます。

一方、imposeは目的語に人や動物以外のものを取ります。こちらも辞典から用例を引いてみます。

Citizenship imposes certain obligations on you. (市民であればいくらかの義務が課せられる。『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

こうした用法の違いがあるため、冒頭の空所にはimposeが入ることになります。上の例文のように、「impose+義務・罰・税・意見など+on人や物」と、前置詞onが用いられることも覚えておきましょう。

以上、動詞のburdenとimposeの用法の違いについて見てきました。同様の注意が必要なものに、例えば他動詞のdiscuss(例:“I discussed the problem with him.”)とlecture(例:“I lectured him on the problem.”)があります。

circle, roll, spinの区別

『ETS TOEIC 定期試験既出問題集 1000 Vol.3 Reading』(原題は韓国語)(YBM,2022年)の「TEST4 PART5」108(p. 110)に、日本語でいうと次のような意味の文章が出てきます。

今年、収穫パレード(harvest parade)は広場をスタート・ゴールにして村を一周します。

出題されている英文は次のとおりです。

This year the harvest parade will —— the village, beginning and ending at the town square.

選択肢の中にはcircleやroll, spinといった単語が並んでいます。言われてみれば、どれも「回る」っぽい意味のような気がしますが、正解はどれでしょう・・・?

正解はcircleです。rollには自動詞の用法も他動詞の用法も両方あります。この場合は後ろに前置詞がないので、the villageを目的語とする他動詞の用法と解さねばなりません(←考えてみれば基本的なことですが、自動詞か他動詞かを見分ける際のポイントです)他動詞のrollは「(ボールなどを)転がす」という意味になります。

例:He rolls a barrel. (彼はたるを転がしている。)

spinも同様です。spinにも自動詞、他動詞、両方あり得ます。他動詞のspinは「(…を)回す、回転させる」という意味です。

例:She spins a coin. (彼女はコインを指ではじいて回す。)

一方、circleは、他動詞で「(…の)まわりを回る、旋回する」という意味があります。上の問題は、「村を転がす」「村を回転させる」では明らかにおかしいので、circleが正解(circle the villageで「村を一周する」)ということになります。目的語の方を動かすのか(この場合、転がしたり回したりするのか)、それとも、目的語ではなく主語の方が動くのか(この場合、目的語「村」の周りを主語「パレード」が回る)を見分ける、のようなイメージです。

一見、似たような意味の単語の中から、正確な英文を作るために適切なものを選ばねばならないという問題です。TOEICでは難問の部類だと思います。一つ一つ覚えて、自分の引き出しを増やしていくしかないかな、といったところです。

searchの目的語

We are —— a solution.(解決策を探しています。)
(A) seeking  (B) searching

空所に入る語として適切なのは、(A)と(B)どちらでしょうか?

答えは(A) seekingです。(B) searchingの場合、前置詞forを伴って

We are searching for a solution.

ならばOKです。つまりこのケースでは、

(A) seekは他動詞、(B) searchは自動詞です。

ところで、注意したい点に、以下があります。

  • searchには他動詞としての用法もあること
  • searchを他動詞として用いる場合の目的語

次の例文を見てください。

He searched his pocket for money.(ポケットの中をお金がないか彼は探した。)

この例文のように、searchには他動詞としての用法もあります。では、本節の冒頭の問題は(B)でも正解でしょうか?

答えはNoです。もう一度、例文を見てください。

He searched his pocket for money.

目的語になっているのは「探したもの」ではなく「探した場所」です。この点がポイントです。

search a house(家の中を捜す、家宅捜索する)、 search the database(データベースを検索する)のように、searchの目的語は「探す場所」です。「探すもの」はforの後に置きます。

以上、「burden, impose」「circle, roll, spin」「search」を例に取って、「どういうものが目的語になるのか?を問う、TOEICでは難問の部類」を整理してきました。

以上見てきたような問題への対策としては、こまめに辞典を引いて語彙力を強化することに加えて、「暗唱できるまで例文を覚える」ことをおススメします。単語だけ覚えようとすると、どうしても混乱しがちです。それよりも、本エントリーで記載したような例文ごと、暗唱できるようになるまで何回も口に出して覚えると、類題が出たときにとっさに対応できます。

 

 

 

certainは複数形を修飾することができる

『公式TOEIC Listening & Reading 問題集6』(国際ビジネスコミュニケーション協会,2020年)を読んでいると、certainが名詞の複数形を修飾する用例に出くわします。「TEST1 PART5」の107(p.42)と125(p.44)です。前者では、問題文の中で、次のように用いられています。一部を改変しつつ、本エントリーに必要な箇所だけ紹介します(ちなみに後者では、正答ではない選択肢の一つとして出てきます)。

Employees agree to certain rules. (左の場合、「従業員は一定のルールに同意しています」といった訳になります)

certainは形容詞として、「…を確信して、確かだと思って」、「…が確実な、確かな」、「一定の」、「ある…、とある…」、「いくらかの、ある程度の」などの意味を表します。例えば以下のとおりです(いずれも『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年.強調、当サイト管理人)。

at a certain place一定の場所に)

I was told it by a certain person.(さる人からそれを聞いた。)

to a certain extentある程度(まで))

上の例もそうですが、certainには、単数形を修飾する用例が目立ちます。ですが、certainには名詞の複数形を修飾する用例もあります。以下のように、複数の辞典で確認できます(強調、当サイト管理人)。

I had certain expectations about the country where I was going to live. (私はこれから生活する国についてある程度の期待をもった。『ジーニアス英和辞典』第5版,大修館書店,2014年)

Certain people are always late for dinner. (『メリアム・ウェブスター英英辞典』ロゴヴィスタ(CD-ROM))

TOEICの文法・語法問題や単熟語を攻略する場合、高校の英語の教科書や、大学入試用の文法書・参考書の内容が身に付いていることが非常に重要。そのため、大学生や社会人(特に、英語が苦手~中級レベルの大学生や社会人)がTOEICを受験する場合、本格的に取り組もうと思ったら、それらを復習することが有用。そのための時間のねん出が鍵だと考えます。が、certainに関しては、高校英語や大学受験では、上に紹介した意味や、単数形を修飾する用法を叩き込まれるはずです。上記のように複数形を修飾する場合もある点は、盲点のはずです。高校英語や大学入試よりも、TOEICを通じて英語を深く学べる部分だと思いましたので、本エントリーで紹介する次第です。

副詞の語尾はlyとは限らない

本エントリーは副詞に関する話題です。高校の英語で「副詞は動詞や形容詞、副詞、文全体などを修飾する」と習いますね。一方、形容詞は名詞や代名詞を修飾します(参考:副詞は副詞を修飾する:副詞は何を修飾するか?のおさらい)。

副詞というと、イコール語尾が“ly”と覚えてしまいがちです。ところがそうとはかぎりません。often, soon, tooなど、語尾が“ly”ではない副詞はたくさんあります。

一方、early, weeklyなど、語尾が“ly”の形容詞もたくさんあります。例文を2つ見てみましょう。

He caught an early train. (彼は早朝の列車に乗った。)

He was reading a weekly magazine. (彼は週刊誌を読んでいた。)

上の例で、earlyは名詞trainを、weeklyは名詞magazineをそれぞれ修飾しており、形容詞です(※)。

※ただし、earlyとweeklyはいずれも、副詞として用いられる場合もあります。

The sun sets early in winter. (冬には太陽は早く沈む。このearlyは動詞setsを修飾しており、副詞です。『ジーニアス英和辞典』大修館書店,第5版,2014年)

I receive my pay weekly. (私は給料は週給でもらう。このweeklyは動詞receiveを修飾しており、副詞です。『ルミナス英和辞典』研究社,第2版,2005年)

つまり、副詞イコール語尾が“ly”とはかぎりませんし、語尾が“ly”でも副詞ではない場合もあります。このこととTOEICの問題は、どう結びつくでしょうか。例えば次のような出題があり得ます。

We had a —— conversation.
(われわれは活気のある会話をした。または「われわれは活発に話し合った」「会話が弾んだ」という訳でもよさそうです。)
(A) live  (B) lively

空所に入る語として適切なのは,(A)と(B)どちらでしょうか?


副詞イコール語尾が“ly”と思い込んでいると、「livelyは副詞のはず→基本的に、名詞conversation(会話)を修飾するのは副詞でなく形容詞だから、答えはlivelyでなくlive」のように考えてしまいがちです。

ところが、形容詞のliveは「生きている、生放送の」といった意味です。一方livelyにも形容詞としての用法があり、「元気な、活発な」などの意味を表します。というわけで正解は(B) livelyです。

こうした問題への対策は、ほかのエントリーでも同様のことを書いていますが、小まめに辞典を引いて語彙力を強化することに加えて、「暗唱できるまで例文を頭に叩き込む」をやはりおススメします。単語だけを覚えようとすると、どうしても混乱しがちです。それよりも、辞典やTOEIC用の問題集に出てくる例文ごと、暗唱できるようになるまで何回も口に出して覚えておくと、類題が出たときにとっさに対応できます。

「suggest+人+that節」という形はOKか?:「SVO+that節」の型を取れる動詞、取れない動詞

I suggested him that he should be president. (私は彼に、会長になってはと提案した。)という英文は可か不可か、即答できますか?


“「suggest+人+that節」という形はOKか?:「SVO+that節」の型を取れる動詞、取れない動詞” の続きを読む

suggestなどの後ろのthat節

仮定法は何かとややこしい事柄が多く、大学受験の英語などでも苦手に思う(思っていた)人が多い文法事項かと思います。本エントリーでは、仮定法の中でもTOEICに頻出の項目のひとつである、仮定法現在の主な用法などについて解説します。

はじめに:仮定法のポイントまとめ

仮定法現在

現在または未来の不確実なことを表す。動詞の原形のかたちを取る。

If need be, I will give you some medicine. (必要なら、薬をいくらかあげますよ。)

ただし、現代英語では、仮定法現在が使われるのは本エントリーの本題に書いた場合であり、条件節(Ifなどの節)の中で使われるのは慣用句以外はまれ(仮定法現在でなく直接法現在が使われる)とされます。上のIf need beは慣用句で「必要なら、必要とあらば」といった意味を表します。

直接法現在を使う場合、上の例文は以下のように言い換えることができます。

If (it is) necessary, I will give you some medicine.

仮定法過去

現在の事実に反する仮定、または、現在もしくは未来についての可能性の乏しい想像を表す。条件節の動詞は過去形(※)。帰結節の動詞は基本的に「過去形助動詞+原形不定詞」。

ただし、条件節のbe動詞は人称に関係なくwere. だが現在、If I were you(もし私があなたなら), as it were(いわば)などの決まり文句以外は1人称単数と3人称単数ではwasを使うことが多いとされる。

このあたりから、「仮定法過去」という名称で、動詞の過去形を用いつつ、現在の事実に反する仮定を表す…ややこしい!となりがちかと思います^^; 既に述べた仮定法現在も、「現在」といいつつ、動詞は原形(結果として同じになる場合もありますが、「現在時制」でなく「原形」)である点など、やはり、「ちょっと覚えづらい」「混乱しやすい」単元かもしれません。

If I were a bird, I would fly to the island. (もし私が鳥なら、あの島へ飛んで行くのに。(実際は鳥ではなく、飛んで行けない))

仮定法過去完了

過去の事実に反する仮定や想像を表す。条件節の動詞は過去完了。帰結節の動詞は基本的に「過去形助動詞+have+過去分詞」。

If I had been a bird, I would have flown to the island. (もし私が鳥だったなら、あの島へ飛んで行ったのに。(実際は鳥ではなく、飛んで行けなかった))

本題:suggestなどの後ろのthat節

「はじめに」が長くなりました(が、重要な事項でもあります)。ここからが本エントリーの本題です。

1.仮定法現在は、前述のとおり、現在または未来の不確実なことを表すもので、形は動詞の原形です。主に、suggestやdemand などの動詞、necessaryやessential などの形容詞の後ろに来る that節の中で用います。that節の中で、仮定法現在ではなく、should+原形不定詞を用いることもできます。その場合は“He suggested that I should be the leader.”となります。例2も同様です。

例1:He suggested that I be the leader. (彼は私がリーダーになるよう提案した。)

例2:It is necessary that Mr. Kato go the U.S. (加藤氏は米国に行く必要がある。)

直説法(普通の平叙文や疑問文、感嘆文)では、be動詞は主語の人称や単複、文の時制に応じて変化します。そのため、上の例1で、“I be the leader”のような表現が奇異だと感じる方もいるかもしれませんが、正しい形です。

さて、ここからもいろいろあります。本エントリーのタイトルを「仮定法現在」などでなく「suggestなどの後ろのthat節」とした理由もそこにあります。

2.上述のとおり、that節の中で、仮定法現在ではなく、should+原形不定詞を用いることもできます。

例1:He suggested that I should be the leader. (彼は私がリーダーになるよう提案した。)

例2:It is necessary that Mr. Kato should go the U.S. (加藤氏は米国に行く必要がある。)

3.insistやsuggestなどの動詞の後ろのthat節では、仮定法現在(またはshould)が使われる場合も、直説法が使われる場合もあります。その場合、両者で意味が異なることがあります。定評のある『ロイヤル英文法』には、たとえば次の例文が載っています。

I suggested that the meeting(should)be postponed. (私は会議を延期するよう提案した。)[筆者補足:仮定法現在。会議が延期されるのは未来の不確実な出来事](『ロイヤル英文法』旺文社,改訂新版,2000年,p.458)

I suggested that the meeting had been postponed. (私は会が延期になったことをほのめかした。)[筆者補足:直接法。会が延期になったのは事実(「ほのめかした」よりもさらに過去の事実)](同書、p.459)

また、やはり優れた文法書である『新マスター英文法』は、あることを事実として述べるものが直接法であり、一方、実現(実行)すべきこととして述べるのが仮定法現在である旨を指摘したうえで、以下の例文を対比しています。

She insists that he is innocent. 〔直接法現在〕(彼は無実だと彼女は言い張っている。)(『新マスター英文法』聖文新社, 全面改訂版, 2008年, p. 463)

She insists that he [should] come. 〔仮定法現在〕(彼が来ることを彼女は強く求めている。)(同上)

参考までに、「suggest+人+that節」という形はOKか?:「SVO+that節」の型を取れる動詞、取れない動詞という記事もあわせてお読みください。

assuming that

assuming that… は「…と仮定して、…と仮定すれば」という意味です。辞典から用例を引いてみましょう。

Assuming that it’s true, what should we do about it? (それが本当だとしたら、そのことについてどうしたらいいのだろう。)(『新英和中辞典』第7版,研究社,2003年)

Assuming that my flight is on time, I’ll be home by this time tomorrow. (私の飛行機が時間通りなら、明日の今頃は家に着いている)(『ジーニアス英和辞典』大修館書店, 第5版, 2014年)

上の例からも分かるとおり、that 節の中は通常、直説法現在です。仮定法は用いません。

TOEICでは、例えばPART5(短文穴埋め問題)の選択肢のひとつとしてassuming thatが問われる可能性があります。assuming thatが正解の場合も、そうでない場合も両方あり得ますが、いずれにせよ「…と仮定して、…と仮定すれば」という意味や、上記の用法を正確に理解し、正答を導き出したい(assuming thatが正解の場合は確実にそれを選択し、不正解の場合は確実にそれを除外したい)ところです。

なお、assume単独では、以下のような意味を表します。

(1)「(…を)事実だと考える、想定する」
(2)「(役目などを)引き受ける、(責任などを)取る」
(3)「(ものが性質・様相などを)帯びる」

(1)には、次のような例文があり得ます。

We assumed the worst. (我々は最悪の事態を想定した。)

Let’s assume (that) there are thirty students in the class. (クラスに30人の生徒がいると仮定しましょう。)

(2)には、次のような例文があり得ます。

He assumed the new role. (彼は新しい任務に就いた。)

I will assume responsibility for the accident. (私は事件の責任を負います。)

(3)には、次のような例文があり得ます。

Things have assumed importance. (事態は重要性を帯びてきた。)

The issue has assumed political proportions. (その問題は政治的な色合いを帯びてきた。)

これらもTOEIC対策として覚えておくとよいでしょう。

「前置詞+which+名詞」:関係形容詞のwhich

関係形容詞のwhich

前置詞+which+名詞」の形がTOEICで問われることがあります(例えばPart5,短文穴埋め問題)。一例として、出版年は古いですが、『TOEICテスト新公式問題集 Vol. 5』(国際ビジネスコミュニケーション協会,2012年)p.51の「PART5,138」がこの事項を問うています。

このような場合のwhichを関係形容詞といい、接続詞と形容詞の働きを兼ねます。関係形容詞について『新マスター英文法』(聖文新社,全面改訂版,2008年)には、代名詞と接続詞の働きを兼ねる関係代名詞と比較する形で、以下の例文が載っています(同書p.217)。

(a) He hates Mrs. Brown, which surprises me. 〔関係代名詞〕
(b) He hates Mrs. Brown, which fact surprises me. 〔関係形容詞〕

(a)のwhich(関係代名詞)は、前文の内容を表す代名詞と、2つの節を結びつける接続詞の働きを兼ねています(同書p. 217)。
〔He hates Mrs. Brown + this surprises me〕

一方(b)のwhich(関係形容詞)は、前文の内容を指してfactを修飾する形容詞と、2つの節を結びつける接続詞の働きを兼ねています(同書p. 217)。
〔He hates Mrs. Brown + this fact surprises me〕

上で対比しているように、『新マスター英文法』は関係代名詞と関係形容詞を区別しており、同書「第7章 関係詞」の中で,関係代名詞と関係形容詞にそれぞれ独立の節を設けています。一方、『総解英文法』(美誠社,1970年,p.176)には「関係代名詞がその直後に名詞を伴って、その名詞を修飾する場合[を関係形容詞という](強調、当サイト管理人)。[中略]関係形容詞とは、関係代名詞の形容詞的用法であると考えればよい」とあります。『ロイヤル英文法』(旺文社,改訂新版,2000年,p.660)も同旨で、関係形容詞は関係代名詞の一種であるという書き方をしています。

英語を学問として研究する場合、上のような文法上の考察は大切だと思います(ここでは、上の説明のどちらが正しいかの議論はせず、両論併記としておきます)。一方、TOEIC対策を第一に考えた場合、関係形容詞のwhich(特に「前置詞+which+名詞」の形)にはよく使われる言い回しがあり、それらを例文ごと覚えてしまうのが手早いと考えます。例えば次の例文を覚えておくと有益です。

例1:He stayed there for a week, during which time he visited his old friend. (彼はそこに1週間滞在し、その間に旧友を訪れた。『新マスター英文法』聖文新社,全面改訂版,2008年,p.217)

例2:The train might be late, in which case you may take a taxi. (列車は遅れるかもしれない。その場合はタクシーを使ってよい。『ルミナス英和辞典』研究社,第2版,2005年)

なお、関係形容詞にはwhichのほかに、whatやwhatever, whicheverの用法があります。これらについても、関係代名詞としてのwhat, whatever, whicheverとの対比で、基本的な用例を以下に整理してみましょう。

what(もしくはwhatever, whichever)単独で、または直後に名詞を伴って、「…のもの、…のこと」、「…するものは何でも」、「どんな…が~しようとも」(譲歩)、「どちらの…でも」、「どちらの…が~でも」(譲歩)といった意味を表すことが分かります。

what(関係代名詞、関係形容詞)

(関係代名詞のwhat その1)What (=the thing which) he says is true. (彼のいうことは本当です。「…のもの、…のこと」と訳すのが基本です)

(関係代名詞のwhat その2)I will give you what (=anything that) I have. (持っているものを全て君にあげよう。この場合のwhatは複合関係代名詞whateverに置き換え可能。2つ下の例を参照

(関係形容詞のwhat)I will give you what money I have (= all the money I have). (持っているお金を全て君にあげよう。)

whatever(複合関係代名詞、複合関係形容詞)

(複合関係代名詞のwhatever←関係代名詞whatの強調形。2つ上の例を参照)I will give you whatever (=anything that) I have. (持っているものを全て君にあげよう。)

(同上:譲歩)Whatever happens [may happen], he will go. (どんなことが起ころうとも、彼は行くでしょう。“No matter what happens [may happen], he will go.”と言い換え可能)

(複合関係形容詞のwhatever)Whatever excuse he makes will not be believed. (彼はどんな言い訳をしても信じてもらえないだろう。『ロイヤル英文法』旺文社,改訂新版,2000年,p.664.この場合は、Whatever excuse he makesが主部。「彼が作るどんな言い訳も」。“Any excuse that he makes will not be believed.”と言い換え可能。下の例も参照)

(同上:譲歩)Whatever excuse he makes, he will not be believed. (どんな言い訳をしても、彼は信じてもらえないだろう。この場合は、冒頭のWhatever excuse he makesは副詞節。「彼がどんな言い訳を作ろうとも」。“No matter what excuse he makes, he will not be believed.”と言い換え可能。上の例も参照)

whichever(複合関係代名詞、複合関係形容詞)

(複合関係代名詞のwhichever)You can choose whichever you like. (好きな方をどちらでも選んでいいよ。)

(同上:譲歩)Whichever you choose, it is OK for me. (あなたがどちらを選んでも、私は大丈夫だよ。“No matter which you choose, it is OK for me.”と言い換え可能)

(複合関係形容詞のwhichever)Choose whichever dress you like. (どちらでも好きな方のドレスを選びなさい。)

(同上:譲歩)Whichever dress you choose, you will look fine in it. (どちらのドレスを選んでも、似合うよ。“No matter which dress you choose, you will look fine in it.”と言い換え可能)